テスト期間中に残って本を読む黒子。
「何をやっているのだよ」
黒子を見ていると、これほどまでに儚い存在がよくも存在できるものだと思う。
極端に色素の薄い髪、瞳、身体。
握りしめれば折れそうなほどに細い腕。
ただ普通にしているだけで、たやすく他に紛れ、容易には見つからない希薄な存在感。
唯一の自己主張である声も、か細く、遠くまで届かない。
その内側の器官もよほど軟にできていて、ちょっとしたことですぐに体調を崩す。
しょっちゅう熱中症で脱水症状を引き起こして倒れ。
多少のランニングで息を乱し、一定の量以上を食べることもできない。
緑間君って、臆病なんですね。
何だと?
聞き返された言葉に返事をすることなく、足の上にまたがった。
ずい、と、顔を近づける。
突然のことに身を引く緑間の眼鏡に手をかけて。
そのまま外した。
急に視力を失った視界に眉を寄せる緑間を、可愛い人だと、感じる。
そのまま頬に口付けを落とした。
っな!?
折角恋人になったので。そういうこともしておこうかと思いました。
黒子は、すまして言ってみる。
だって緑間君、ボクに手を出さないじゃないですか。
疑問に思う。
好きだと言ったのは彼なのに。
これでは自分の方が彼を求めているようだった。
緑間の携帯に電話。黒子に代わる。
もしもし。
あっ黒子っち!?今どこにいるんスか!?
今は、高尾君の家でご飯を頂いてます。
高尾って誰!?
緑間君の友達です。
なんでそんなとこにいんの~!!
最近よく一緒にいますけど。
そんな暇があるならオレと遊んでッス!!
だってキミ忙しいじゃないですか。
忙しいけど…でもオレだって黒子っちに会いたいッス!
山のようなスカウトの紙。
よりどりみどりだ。
「どこに行くつもりなんですか」
「…とりあえず家から通えることは最低条件だな」
「一人暮らしは大変でしょうしね」
「寮生活も嫌だからな」
「でも一人暮らしって憧れないッスか?」
何かしてほしいことないですか。
…なんなんだいきなり。
いえ。今日、キミ、誕生日でしょう。
…覚えていたのか。
はい。
…唐突だな。
ボクに何かできることがあるなら、します。
…疲れているのか?
…別に、ボクの心配をしろとは言ってません。
オマエがいつもの調子でないのが悪い。
……。暑く、なってきましたから。
…確かにな。倒れるような馬鹿げたことはするなよ。
倒れたくて倒れてるんじゃありません。
オイオイ、ダイジョーブかよ。
…大丈夫です。
ぐ。
よぉ。
…高尾君。
優しく目を塞いで。何にも見えなくしてあげる。
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