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黒子のバスケの2次創作ブログ。 キセキ中心の黒子受け雑食(黒桃有)で文章書いてます。お勧め→◇
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長い長い春休み。
入学前指導の課題と制服、教科書類はもう全て手に入っていて、部屋に飾られている。


もう後戻りはできない。

今日から黒子は誠凛高校1年生なわけだ。
もう帝光中学からは完全に縁が切れてしまった。


楽に、なれた。


その事実は確かにそこにある。

約半年、誰にも見つからないよう、ミスディレクションを発動し続けるのはつらかった。
教室にだってうかうか残れないし、誰とも話すことができない。

中学入学当初だと思えばそれはそれにとても近かったのだけど。

けれど違う。
一度与えられた幸福は麻薬のように、しつこく黒子を誘惑した。
禁断症状のようにひきつれる心を必死で隠して逃げ続けた。

そこまで完璧に隠れられたのもバスケ部で積み上げた成果だったことが、悲しい。
結局自分の全てはバスケによってしか構成されないのだ。
バスケが楽しくないからやめたはずだったのに。
結局バスケに関わる方法で彼らの眼から離れている。


なんて矛盾。


中途半端な立場。


それが終わった。

もう向けられる視線におびえなくてもいい。

これからは好きにバスケをやれる。


今度こそ、したい、バスケを。




それでもそのことに酷い空虚を覚えた。

かつての彼ら以上にボクを満たしてくれる相手なんか存在するのだろうか。
その事実に傷ついて本当にどうするのか。


俯きながらふらりと歩いた。
少しは気がまぎれるかと思って。

でもちっともそんな気にはなれなかったけれど。

ただ思い出してつらいだけ。


早く学校が始まればいいのに。
新しい環境になれることに忙しくなれば、きっともうこんなことを考えなくても済むようになるだろう。


そう、願う。

それを寂しいと思うなんて、何もかも間違っているのだけど。



ふと、珍しく、公衆電話を見かけた。
声が聞きたいと思ってしまった。

せめて、最後に。



携帯で、番号を確かめて、ボタンを押す。
なんてレトロな感覚。


『…もしもし』


それだけで、泣きそうになるなんて。
ボクはどこまで彼のことが好きなんだ。
それだけで嬉しくて黙り込むと、相手は、酷く戸惑ったようだった。


『…もしもし?』


ああ、切らなくては。
たちの悪いいたずら電話。
でも仕方ない。

それでも一言何か伝えたくて。


「…好きです」


嘘にもならない言葉を言った。
そのまま受話器を下す。


何をやっているのか、ボクは。


眼を閉じて、また、歩き出す。






もうすぐ新しい生活が始まる。




 

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