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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
(ホワイトデーネタ。多分バレンタイン読んでなくても通じます)
「桃井さん」
「あ!テツ君、どうしたの?もうすぐ部活始まるよ!」
「今日、一緒に帰りませんか」
「…っえ!?」
驚愕の申し出から、数時間。
ひょっとして夢なのではないかと不安になりながらもドキドキして待っていた桃井の元へ、黒子はやってきた。
「すみません、遅くなって」
「ううん!全然気にしてないよ!!」
「そうですか、よかった」
「う、うん」
「じゃあ、帰りましょうか」
「…うん!」
並んで、帰り道を行く。
黒子からこんなふうに誘ってくれたのは、これが初めて。
何度か一緒に通った道なのに、それだけで、心臓がバクバクして止まらなかった。
「…もうすぐ、3年ですね」
黒子が、ふっと、口を開いた。
「あ、うん!そうだね!!」
桃井は異常なまでにテンションの高い返事をしてしまって自分で落ち込んだ。
なにこれ。もう。
「あっという間、でしたね」
「…そうだね」
「まあ、赤司君が早くからキャプテンについたおかげで、下級生らしい振る舞いなんて、全然してこなかったんですけど」
「あはは、そうかも」
上下関係なんてないに等しかった。
重要なのは強いか否か。
能力があるか否かだ。
桃井もそうして、必要とされてきた。
「マネの方では、卒業生の方々に、いろいろ用意とかあるんですよね」
「…うん。もう、粗方終わったんだけど」
「こっちも最低限寄せ書きとかはしましたけどね。ボク等から貰っても、嬉しいのかどうかはわかりませんが」
「…まあ、完全に先輩たちの出番食っちゃったもんねー」
「仕方ないと言えばそれまでなんですが、少し、申し訳ない思いもあります」
「…テツ君は、優しいね」
「ボクがかつては、持たざる側だったことも、あるかもしれませんが」
黒子は、少し俯いて、言う。
「そんな同情をされても、嬉しくはないんですけどね」
「…難しいよね。そーゆーのって」
マネージャーの中ではやはりそこまでの確執はない。
でしゃばることを睨まれもしたが、普通の作業ではやはり先輩達をたててきた。
それが、選手では、条件が違いすぎて、どうにもならない。
容赦なく2軍に転がり落とされて、先輩らしい振る舞いも、許されない。
「まあ、新入生に抜かれないよう、頑張りますよ」
「抜かれるわけないよ!だって、テツ君のプレイは、誰にも真似できないもの!!」
だからこそ価値がある。
「…ありがとうございます」
「あんまり、尊敬とか、されるようなタイプじゃないけどね?でも、そうやって影で皆を支えられるって、ホントは凄いことだって思うよ、私」
「…褒めすぎですよ」
「ううん!!だってこんなの、他の人には絶対できないよ」
1軍にいるのは殆どが自分のプレイを前面に押しまくる強気で独りよがりな選手だ。
黒子のように影に徹する選手などいない。
それが悪いことではないのだろうが。
そんなチームがうまくやっていけるのは黒子のような存在がいるからでもある。
「後輩がそれに気付いてくれたら嬉しいよね。黒子センパイって、懐いてくれたらもっといいかも!」
「…その人の観察眼は凄いんでしょうね」
「うん。でもそろそろ、次世代も育ってもらわないと困るからねー。キャプテンも色々考えて練習させてるみたいだけど」
「そうですね。ボクらも、もう1年後には、いないんですからね」
「…なんだか、寂しいね」
桃井は、呟く。
「ずっとバスケしていられるような気がするのに。…そういうわけにもいかないんだよね」
「……そうですね」
「ねえテツ君、私、テツ君と同じ高校行きたいな!」
「…そうなんですか?」
「うん!だから、決まったら教えてね。私は流石にバスケ部の肩書が背負えないから一杯勉強しないと!」
「桃井さんなら、大丈夫ですよ」
「そうかなー。でも、青峰君の勉強もある程度は見なくちゃいけないからねー」
いくら推薦で行けるとはいえ、赤点ばかり取っていたのではそれも怪しいだろう。
「それは、皆で何とかしましょう」
「うん。国語はテツ君を頼りにしてるね!」
「後は緑間君と赤司君ですね」
「めんどくさいって言うだろうけどねー」
「でも、きっと付き合ってくれますよ」
「なんだかんだで宿題とかそうやってきたもんね!」
「春休みの課題も、きっとそうなるんでしょうね…」
「最初が肝心だもんねー。ちゃんと先生に面倒見てもらえるように頑張らせないと!」
「頑張りましょう」
「うん!」
笑って、言葉を交わす。
いつの間にか、テンポよく会話ができるようになっていた。
酷く、落ち着く、やりとり。
永遠に続けばいいと思うような。
けれど、終着点はすぐにやってきてしまう。
其処まで近い家ではないのだけど、もっと、もっと距離があればいいのにと、思った。
そうすれば、もっとずっと話していられるのに。
「テツ君、今日はありがとうね!一緒に帰れて楽しかった!!」
また誘ってくれないかななんて、思いながら、声を出す。
「ボクも、楽しかったですよ」
「ほ、ほんと!?」
桃井は嬉しくて、舞い上がりそうだった。
ただ黒子は、すぐに眼を逸らしてしまう。
鞄に手を突っ込んで、がさがさと、鳴らした。
「…どうしたの?」
「いえ…」
そして見つけたそれを取って、桃井に差し出した。
「これ、どうぞ」
「えっこれ…!?」
「バレンタインの、お返しです。チョコ、ありがとうございました」
桃井は嬉しくて、絶句してしまう。
一緒に帰れるだけでも十分だったのに。
黒子がキセキに渡していたものよりは、一回り大きな包み。
黒子が差し出すそれを、桃井は、震える手で、受け取った。
涙が出そうだ。
「あんまり、大したものではないですけど」
「ううん!!すっごく…すっごく、嬉しい…」
大切に、それを胸に抱く。
顔を真っ赤にして。
黒子は、その様子を見て、よかったと、思った。
余計なことかと迷ったけれど、こうしてよかった。
「それじゃあ、ボクは、これで」
「あっ…うん…。ほんとに、ほんとにありがとね!!嬉しい…」
なんて伝えたらこの喜びが伝わるだろうか。
テツ君みたいに本を読んでおけば、上手いこと言えただろうか?
つたない言葉で、伝われと、必死に思う。
「…おやすみなさい」
黒子は、笑った。
桃井はもう、死んでもいいと思った。
なんて幸せなの。
「おやすみ、なさい」
何とかそう返して、黒子の背が、離れていくのを見送った。
なんてご褒美だろう。
来年は、きっと、もっと頑張ろう。
そう思う。
もっともっと喜んでもらえるように。
私が幸せになれたように。
彼にも。
彼にも、どうか沢山の幸せを。
願うのは、ただそれだけだった。
++++
黒子が桃井に挙げたのは、キラキラしたビーズを通した針金で模った箱の中に、飴が入っているような奴のつもり。
私個人的にあれが欲しいんですよー。
置くところないけど。
あれなら中身食べちゃっても残るし。
食べないでずっと置いといて青峰に叱られる桃井とかも可愛いですけどね^^
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