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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
「おはようございます」
黒子は、朝練のためいつものように早く、部室にやってきた。
そこには、赤司と、緑間の姿がある。
「おはよう」
「ああ」
いつもならそこで黒子は無言で荷物を置いて着替えを始めるのだが、鞄の中から紺色のシンプルな包みを2つ取り出して、2人に向かう。
「これ、どうぞ」
「…何だ?」
「ああ、ホワイトデーか?」
「…何だかんだで、頂いてしまったので。500円もあれば結構美味しいチョコが買えますね」
「それはよかった。まあ、涼太の方が凄いのを買ったんだろうけどね」
「黄瀬君のは高すぎて腰が引けます」
「ははは」
赤司は笑って、そのまま颯爽と部室を出て行った。
彼はキャプテンである以上、早め早めの行動が欠かせない。
「緑間君も、胃薬、ありがとうございました。結構、効いた気がします」
「…次の日保健室にいたようだが?」
「…1個じゃ少し足りなかったかもしれません」
「…もう少し与えておけばよかったか。あの日のお前のラッキーアイテムは、胃薬だったのだよ」
「それは、よく当たってますね」
「そうだろう」
「…まあ、とりあえず、これ、どうぞ。そんなにいいものではありませんが」
「…貰っておいてやるのだよ」
「はい」
そのまま着替えて部活に向かった。
朝のメニューはばらばらで、一緒の練習などほぼないに等しいが、それでも、どこか、お互いの存在を気にかけて。
昼休み、黒子は紫原の教室を訪ねた。
紫原はばりばりと駄菓子を食い漁っている。
その周りには食べかすが散らばって掃除当番が絶対に苦労しそうなありさまだった。
「紫原君」
「あれ、黒ちん、いたの」
「いました」
「そう。で、何?赤ちんから伝言?」
「いえ。これを渡しに」
黒子は例の包みを差し出す。
「…何それ。何かの小道具?」
「飴です」
「ふーん。で、くれんの?」
「はい。この間の100円のお礼です」
「…100円?なんだっけそれ」
紫原は完璧に忘れているようだ。
黒子はどうせそんなところだと思っていたとため息をつく。
「とりあえずあげるために来ました。部活に来てくれるなら、あげます」
「えー」
「えーじゃありません」
「オレ何か貸あるんでしょ?じゃー条件なしでちょうだいよ」
「何か忘れられてたんで腹が立ちました」
「…素直だね」
「そうですね」
「…わかった、行く」
「そうですか、はい、どうぞ」
紫原は貰うなり、その中身を机にぶちまけた。
ピンクと、白の、飴。
「少な」
「…そういうものなんです」
「まー貰っとくよ」
「そうしてください」
渡すものだけ渡して、さっさと黒子は出て行った。
紫原はなんとなく包みの一つを解いて、口に入れる。
甘い、バニラの味がした。
「「ありがとうございましたー」」
帰りのSHRが終わって、青峰はとりあえず座った。
今日はどうしようか。
面倒くさい。
つーか眠い。
けど今は学校で昼寝ができるような気温じゃない。
まず暖かい教室から出るのが怠かった。
「青峰君」
「あ?」
突如かかってきた声に顔を上げる。
荷物を抱えた、相棒の姿。
「…今日は早ーな、テツ」
もう呼びに来られるのはいつものことになっていたが、ここまで早いのは珍しかった。
いつもはもっと教室に人がいなくなってから来るのに。
「ちょっと用事があるので早く済ませたいんです」
「なら迎えに来んなよ…」
呆れてしまう。
そんな義務で来られたことを強調されてもこっちは行きたくなくなるばっかりだ。
「いえ。まあ、他に用事もあったので」
「他に用事?」
「はい。これ」
「あ?」
「バレンタイン、結局貰ってしまったので、お返しです」
ああ、そうか。
今日ホワイトデーだったか。
律儀なヤツ。
オレは誰にもお返しなんかしなかったのに。
受け取ろうとして手を伸ばして、すっとそらされる。
「…オイ」
くれるんじゃなかったのかよ。
「部活に来ない人にはあげません」
大体バレンタインの時には貰いやすいよう部活に出てたの誰ですかと、黒子は言う。
「…そんなんじゃねーし」
ちょっとそれもあったけど。
やっぱり貰えるものは貰いたい。
「来るんですか?来ないんですか?」
いつもとは立場が逆転してるみたいだ。
「…わかった、行く。だからくれ」
黒子は、少し頬を緩める。
そして、青峰の手の上にそれを落とした。
「じゃ、ボク先に行ってます」
「あ、オイ!!」
青峰が慌てて立ったが、黒子が消える方が早い。
すぐにどこかに行かれてしまった。
「…行かねーでやろーかな…」
そう呟いたが、明日もっと煩いのが目に見えている。
まあたまには折れてやってもいいだろう。
青峰は立ち上がって、黒子の後を追って、部室を目指した。
久しぶりに、楽しそうな笑みを湛えて。
そして部活の時間がやってきて。
相変わらず黄瀬にせがまれて青峰は仕方なく1on1を受けてやる。
あっという間に時間は過ぎて行った。
黄瀬が部室に戻るころには、通常の部活終了から遥かに時間が経っていた。
「遅いです」
「あれ!?黒子っち、もう帰ってたんじゃなかったんスか?」
「帰れない事情があったので」
「青峰っちと約束でもしてるの?」
「してねーよ。ったく、こんな遅くまで付き合わせやがって」
「キミが忙しそうだから中々渡せなくて。はい、これ、どうぞ」
黒子は、ひょいと黄瀬に包みを渡す。
「あ、これ、ホワイトデーの!?」
「流石、モテる男子は反応が早いですね」
「オレがモテねーとでも言うのかよ!」
青峰のいうことはこの際無視だ。
「キミに貰ったものほど、高級ではありませんが」
「そんな…嬉しいッス…」
「まさかテツがくれるとは思わねーよな」
「一応義理は果たす性分なもので」
「…青峰っちとかにも、あげたんスよね、勿論」
「そうですけど」
「…でも、嬉しいッス!ありがと!!」
「そうですか。よかったです。では」
「え!?黒子っちもう帰っちゃうの?」
「はい、人を待たせてあるので」
「ええ!?!?」
黒子は黄瀬の声にも反応せず部室を出て行った。
慌てて黄瀬がその後を追えば、手を振る桃井に、黒子が小走りに近づいていくのが見えた。
「……桃っち…!!ズルい!!!」
「いやしゃーねーだろ。ホントは女のイベントだし」
「だってあんなゲテ物黒子っちに食べさせといて!!」
「いやオレだって喰わされたけど」
「青峰っちはどうでもいーんスよ!!」
「……」
ごす。
「いったぁ!!」
「ふん」
「ヒドイッスよ!!傷心のオレに!!」
「うっせーよ!黙ってろ!!」