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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
(V.D.ネタ)
「で、できた…!!」
夜中の、2時。
桃井は、失敗に失敗を重ねて作り上げたチョコレートを掲げて、嬉しそうに笑った。
なんとかできた。
もうできないかと挫折しそうにもなったけど、頑張ってよかった。
青峰君にはもう買って渡せよとか暴言も吐かれたが、諦めないでよかった。
テツ君は受け取ってくれるだろうか。
いや、きっと受け取ってくれる。
彼は優しい人だから。
付き合ってくださいなんて、とても言えないけれど。
好きだと言うことは、言葉でも思いでも、沢山、沢山伝えたかった。
「テツ君!」
「桃井さん」
部活が終わって早々、桃井は、鞄を肩にかけたまま、黒子に走り寄る。
「部活、お疲れさま!」
「いえ、そんなに疲れてないですよ」
「そうだね、今日はちょっと早く終わったし」
「女子が大勢外で待ってましたからね…」
「皆人気者だからねー。でも、皆見る目ないと思うけど」
「そうですか?」
「そうだよ!なんで青峰君があんなにモテるのかな…意味わかんない」
「まあ背も高いし、ノリよかったですしね」
最近は、変わってきているが。
それでも、教室ではまだ普通にしているようだから。
「うーんでも、あんなの子供で馬鹿なだけだと思うんだけどなぁ」
「でも、バスケしてる姿見てると、やっぱり、格好いいですよ」
「うーん、それは、まあね」
「それに、一番人気は黄瀬君じゃないですか」
「きーちゃんもねー…。黙ってれば悪くないんだけど」
「確かに、喋るとイメージ少し崩れますね」
「そこがイイって子もいるんだろうけどね?やっぱりわかんないなぁ…」
「緑間君も一見クールだからモテますしね」
「それ、笑っちゃいけないけど面白いよね!全然わかってないなって、思っちゃう」
「まあ、彼が付き合う気がないのなら、幻想を抱いていても許されるんだと思いますよ」
「うんうん、そうだね。だって、ムッ君にあげる人だっているんだもんね」
「まあ、お菓子貰って喜びそうなのは彼ですけど」
「でもなー、あの子と付き合ってもなんか全然楽しくなさそう…」
「ぼーっとしてますからね」
黒子は、そこは、頷かざるを得なかった。
彼が何も楽しんでいない以上、付き合って一緒にいる時を楽しく過ごすと言うのは無理がある気がする。
「それで、何か?」
世間話をするために呼び止められたのではないだろう。
桃井はこちらに駆けてきた様子だったし、何か用事があった筈だ。
そう聞くと、桃井は、嬉しそうに笑った。
「あのね、これ、渡しに来たの!」
まず渡されたのは、小さな包み。
中に何か軽いものが入っている感触がする。
「マネージャーからだよ。皆いつもお疲れさま!って」
「そうですか。嬉しいです」
「それから、これ、私から!!」
ひゅん、とすごいスピードで差し出されたのは、それよりはるかに大きな包み。
リボンやなんかでゴテゴテにラッピングされていて、賑やかなことこの上ない。
目を瞑って、勢いに任せて、桃井は言う。
「テツ君に受け取ってほしいの!!」
黒子は、それを受け取った。
結構、ずっしりと重みがある。
「こんなに立派なの、ボクが貰っていいんですか?」
「うん!!テツ君に貰って欲しくて、作ったの!!」
「…ありがとうございます。嬉しいです」
桃井が慌てて顔を上げて黒子を見ると、黒子は、薄ら笑っていて。
桃井は真赤になって顔を抑えた。
黒子がこんなふうに自分に笑ってくれるのは、とても珍しかった。
彼のいつもの真剣な顔がとても好きだが、こうやって自分の前でそれが崩されるのも感慨深いものなのだと、桃井は知った。
「あ、あの、あのね、美味しくなかったらごめんね!!頑張ったんだけど、あんまり手のこんだものとかできなくて…!!」
「いえ。十分ですよ。わざわざ、ありがとうございます」
「うっうん!!それじゃ、また明日!!」
「はい、また、明日」
黒子の優しい声に桃井はもう倒れてしまいそうで、全速力で走ってその場を立ち去った。
黒子は元気だなぁと思いながら、その背を見送る。
桃井の料理の酷さは、知っている。
バスケ部ではもう有名な話だった。
それでも、自分のために作ってくれたということが、ありがたかった。
どんなもので流し込むことになろうとも、必ず食べよう。
そう思う。
青峰君の付随品としてでも、協力者としてでも、それでも構わない。
彼女のまっすぐでひたむきな思いに、応えようと思うのだった。
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