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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
実家から再三帰ってこいとの通告があった。
もう暫く帰っていない。
きっと引き留められるだろうから、今まで帰っていなかった。
黒子からできれば目を離したくなかった。
しかし、いい加減に、誤魔化すのも限界だった。
家に一度帰ると黒子に告げた。
勝手にいなくなるなよと、きつく言って。
大丈夫ですよと黒子は言った。
どうせなら黒子も連れて帰郷すればよかったのだが、それは断固拒否された。
人混みではぐれられるよりは待たれていた方がまだ心配せずに済むかと、置いていくことを決めた。
しかし帰省先でも全くくつろぐことはできなかった。
当たり前だ。
一番の気がかりを残しているのだから。
家のことやらなんやらを聞いたが、殆ど聞き流してしまったように思う。
そこそこにくつろいだが、引き留められるのもそこそこに数日で、部屋に戻った。
そもそもちゃんと待っているのかどうかも、疑問だった。
約束を破るような奴ではなかったが。
いついなくなってもおかしくない姿は脆くて手元に置いておかなければ不安で仕方なかった。
家に帰った時、返事がなくて、一瞬肝が冷えた。
中に入れば、横になっている姿を見つけて、ほっとしたが。
黒子は、倒れるようにして眠っていた。
安心して息をついて、夕食でも作るかと冷蔵庫を開ける。
全てが、出て行ったその日のまま手つかずだ。
黒子の為に残しておいた食物すらそのままだ。
賞味期限は大丈夫なものを選んでいたから食べられるが。
そういう問題ではなく。
いつからだ?
いつから、食事をしていない?
餓死するつもりかと、本気で、頭に血が上った。
がっと、肩を引いた。
黒子は、驚いたように眼を開けて、こちらを見上げる。
「…帰ってたんですか」
「オマエ、何か食べたか」
「……あ、」
黒子はしまった、とばかりに眼を逸らした。
「馬鹿かオマエは!!」
言っては駄目だと知っているのに、口は勝手に言葉を紡いでいく。
本当に言いたいことは、ちっとも、出て行かないのに。
「なぜ生きようとしない!?オマエならいくらでも選べただろう。誰の手でも適当に借りて生きればよかったはずだ。今までそうして生きて来たんじゃなかったか!?」
肩を掴む手に力がこもる。
折ってしまいそうだ。
そう思うのに勢いは止まらない。
「何故諦めた。かつての気概はどこにやった!?何の努力もせず消えようなどとおこがましい。何か努力してから物を言え!!」
黒子は黙ったまま、こちらを見ない。
聞いているのかと。
余計に逆上する。
「ここにいればいいとは言ったが、ここで死ねとは言っていない筈だ!オレがいなくても人並みに生きて見せろ!!」
その後も散々怒鳴りつけた。
黒子は何も言わなかった。
夕食は無理やり引っ張ってきて食べさせた。
相変わらず何を考えているかわからない顔で、すました様子で黒子は黙っていた。
何か言わなければわからないのに。
その夜不機嫌に会話も交わさずに床について。
眠れなかった。
黒子もそうらしく、がさがさと、寝返りを打ったり、ごそごそしている様子が、わかった。
それでもうとうとしていたころ。
ふ、と、頬に何かが触れた。
少し遅れて眼を開けば、離れていく白い影。
月明りでぼんやりと浮かび上がっているように見えた。
「待て!!」
そういうと黒子がこちらを振り向いたのが分かった。
眼鏡をかけていないからそれしかわからないが。
片手で黒子を掴んでもう一方で眼鏡を取った。
黒子は戸惑ってこちらを見上げている。
手には鞄。
ここへ来た時に持っていたはずの。
「…どこへ、行く」
「…もう、ここにはいられません」
「何故だ」
わけがわからない。
どうしてこいつはこうもぶっ飛んだ発想しかできないんだ。
「………」
「黒子」
「…ごめんなさい」
「…何故謝る」
「ボクはバスケが好きだったけど、バスケは、1人じゃできません」
「それはわかるが」
「バスケができないならボクに何の意味があるんだろうと思ったんです」
「ボクのバスケはずっと、誰かに依存してました。ボク自身には何もなかった」
「新しく見つけたスタイルだって、やっぱり誰かに依存していて。ボクにはバスケしかなかったし、光が、そこにいてくれることが必要だったんです」
「それでバスケをなくしてみて。改めてボクには何もないんだなと思った」
「誰もボクには気付かない」
「…それで平気だったはずなんですけど」
「じゃあきっとこのままいなくなっても誰も気づかないなと、思ってしまいました」
「死んだって誰も気づかないんじゃないかって」
「それならボクが生きている意味はどこにあるのかって」
「だから本当にいなくなろうと思ったんです」
「連絡を絶って、こっそりいなくなれば、誰もボクの失踪には気付かないと思った」
「だからそうしたんです」
「いなくても、何も、変わりないなら。いっそいなくなりたかった」
「だからキミに見つけられた時、ボクは、本当に驚いたんです」
「誰にも、見つけられるわけなんて、ないと思ってたのに」
「黒子」
とつとつと語るその様子がつらそうで。
名を呼んだ。
「でもキミにずっと依存することはできないです」
「?」
「迷惑、でしょう」
「…勝手に、決めつけるな」
「明確な終わりもないのに。依存し続けるなんて無責任にもほどがあります」
「…黒子」
「もう終わりにしなくちゃいけないんです!」
「ずっと一緒にいられるわけなんかないのに、そんなこと、願ったら、いけないんです…」
「ここにいろ」
「…緑間君」
「どこにも行く必要はない」
「ずっと必要としていてやる。だから、ここにいろ」
抱きしめる。
なんて細い身体。
ずっと一人で耐えてきたのか。
「ここにいてもいいですか。キミが嫌になるまででいい」
「ボクがここにいてもいいですか」
断るわけが、ないだろうと。
「最初から、いいと言っている。…馬鹿め」
黒子は泣いた。
子どものように。
愛しい小さな体は、孤独に震えていた。
身体を抱き込んだまま、ベッドに座り込んだ。
抱き込んだ黒子を、離すことはしないで。
「好きだ」
黒子が驚いて身体を翻す。
それでも離さない。
「依存するなら依存しろ。オマエならば構わん」
月明りに照らされた黒子の頬を涙が伝うのが見えた。
とても、綺麗だった。
そっと指で拭って、強く、抱き寄せる。
好きだと、もう一度、囁く。
黒子が何かを言う前に、口付けた。
もう離さない。
++++
この話は一応これで終わりなんですが。
数年後緑間が病気になって、死ぬ前に火神を呼んで黒子を任せようとする話もネタとしてはありました。
黒子は緑間と一緒に死のうとするんだけど、火神がそれを引き留めようとする。
黒子が結局どちらを選ぶのかは決めてないんですけど。
以下断片。
「ボクはキミだけいればいい」
「生きろ、黒子」
「オマエは緑間の気持ちもわかってやれよ!!」
「ボクはもうキミ以外の人との人生なんて欲しくないのに」
「ボクだけの想いじゃなくて…。キミを独りで逝かせたくないんです!!」
「キミはボクに一緒にいろと言ってくれた。ボクがその時どんなに嬉しかったか」
「どうか一緒に逝かせてください。…それだけがボクの、最後の、願いです」
それでも緑間は黒子を生かすのかな。