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ただ時計としての役割しか果たさない、地味で、目立たない時計。
まるで自分のように無個性だ。
彼もそれをわかってボクに与えたのだろうか。
それとも、彼がそういったものを好きなもの好きなだけか。
時計の音は落ち着く。
彼から貰った時計。
耳に当てて、横になる。
音にだけ集中して、何も考えないでいられる。
こんなふうに頼りにしていることなど、絶対に知られたくはないけれど。
傍に居られないならこれぐらい許されてもいいと思う。
コチコチと音を立てる飾りのない時計に口付けた。
これをくれた彼は、今、何をしているだろうか。
浮かぶのは、ゴールに向かってひたすらボールを放るあの後姿。
もうきっと、こんなものを与えたことすら彼は忘れているのではないだろうか。
そう思うと未だにこれに頼っている自分が、途端に惨めになったけど。
もう通い合わなくていいと思った。
そうすれば別れる恐怖におびえなくてすむ。
心平安でいられる。
物のようにただそれだけで完結して変わることなどなかったら。
全部忘れて、眠りたい。
時計の音はゆっくりとそれにボクを導く。
彼の夢を見るかもしれない。
そんなことを思った。
でも、夢でならいいだろう。
それだけで完結しているのなら。
それだけで、先などなくて、何も面倒なことがなかったら。
つらくても悲しくても傍にいられたらそれだけで。
ただ、それだけでいい。
きっと。
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