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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
「黒子、何を読んでいる」
「…見ます?」
「…菊の、図鑑か」
「はい。色々あって、綺麗ですよ」
「珍しいな」
「はい?」
「オマエは、非現実的な小説ばかり読んでいると思っていたが」
「…非現実的って。馬鹿にしないでくださいよ?」
「馬鹿にしてはいないが」
「…今日は、重陽の節句なので。気持ちだけ」
「……そうか。今日は、9月9日だったな」
「はい。まあ、基本的に祝われないことが多いですけどね」
「そこらの神社にでも行けば、菊の展覧会でもやっているかもしれんがな」
「流石に、そこまで暇ではないので」
「確かにな」
この季節は、学生にとって中々忙しいことが重なる。
体育祭、新人戦、文化祭が、主な行事だ。
今は体育祭のため部活の時間が削られてしまうため、居残りなども多くなり、なかなか大変なのだ。
それでなくとも体の疲れは増していくばかりであるのに。
「それに、本は読んでると、気になって中々寝付けなかったりしますから」
「…まったく、本の虫だな」
「キミはそういうことないんですか」
「オレは自己管理できない奴とは違うからな」
「…はぁ」
「まあ無理して菊を観賞に行ったりしなかったことは誉めてやろう」
「行きませんよ。そこまで、風流な人間ではありませんから」
「そうか」
「ええ。バスケで、手いっぱいです。他のことには手が回りません」
「…無理はするなよ」
「したくないです」
「体育祭の練習で疲れたなら、無理して全参加する必要もないのだからな」
「……キミにそんなことを諭されるとは思いませんでした」
「無論、元気ならば全てに参加するべきだがな。身体を壊すよりは計画的に参加された方がこちらとしても都合がいい」
「…わかってますよ。赤司君にも注意されますし」
「本当にわかっているのか?」
「わかってますって」
しつこい緑間に、黒子は意気地になって、言い返す。
それでも相手は納得した様子を見せなかったが。
そこは、もう仕方がないと、黒子も知ってはいた。
途切れた会話の間を取り繕うように、ぱらぱらと、図鑑のページがめくられる。
「菊も、随分といろいろな品種があるものだな」
「…そうですね。ボクも、驚きました」
「美を求める人間の欲望には限りがないということだな」
「そうかもしれません」
「…強さも、な」
「…そうかも、しれません」
「…オマエはいわば突然変異種だ。誰にも扱い方などわかっていないし、その可能性もわからん」
「……はぁ」
「だからだ。その可能性、自分で潰すなよ」
緑間は、本を黒子に突っ返しながら、そう偉そうに告げた。
「…潰すつもりはありませんよ。ただ、もっと、伸ばしたいだけで」
「…それで潰れては元も子もないがな」
「わかってます。…気を付けますよ」
その返事を聞いて、やっと緑間は納得したようで。
そのまま身をひるがえしてどこかへ行ってしまった。
黒子はそれをぼんやりと眺めて、息をつく。
心配してくれるならもっと穏やかにできないのだろうかと、内心、ぼやきながら。