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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
がくん。
「黒子!?」
練習に疲れた身体が、崩れる。
慌てて駆け寄った緑間の手前、黒子は大丈夫だと言って立ち上がった。
しかし、その直後に、顔をしかめる。
緑間はそれを見逃さなかった。
「どうした」
「…いえ」
「怪我をしたのか」
「いえ、平気です」
「……見せてみろ」
「っちょ…いいです、こんなとこで」
「馬鹿かオマエは。今やせ我慢して悪化させたら後悔するぞ」
「……」
それはその通りで。
黒子は仕方なく足を見ることにした。
「…自分で見ますから」
「……」
そう言って、緑間の見下ろす前で靴を脱ぎ、靴下をずらす。
まだ明確にはわからないが、ぼんやりと赤みを帯びていて。
緑間は無言で屈んでそこに手を伸ばした。
「痛っ…!」
「…骨に異常はなさそうだな」
「…これぐらいで折れてたら困ります」
「ちょっとした衝撃が最悪の結果を生むこともある」
「……そうですね」
黒子は靴を元通りに履いて、立ち上がる。
そして、少し引きずるようにして歩き出した。
それを腕を掴んで、緑間が引きとめた。
「…何ですか」
「歩くな」
「…そうは言っても、家に帰らないとどうにもできないです」
「…負ぶってやる」
「………キミがそんなこと言うとは思いませんでしたよ」
「煩い。いいから乗れ」
「…いえ、そこまで大怪我でもないですから」
「…強情な奴だな」
「キミこそ」
「ならばどこか薬局でも見つけて湿布でも買うか」
「…多分、家にまだあると思うんですよね」
「…なら帰るしかあるまい」
「だから歩いて帰りますって」
「……歩くな」
「…はぁ」
「負ぶわれるのが嫌なら担ぐぞ」
「………それもそれでイヤです」
「大人しく負ぶわれていた方が楽だと思うが?」
「………そうみたいですね」
黒子は不承不承、緑間の背に乗る。
緑間は軽々と黒子を持ち上げた。
あまりにも急激に視界が代わるので、黒子は眩暈すら覚えるようだった。
普段より数十㎝も高い、その視界。
そして広い背。
自分と比べると悲しくなるほどに違う。
緑間はそのまま平然と歩き出した。
しっかり掴まっていなくても大丈夫そうなぐらいには余裕そうだったが、一応、申し訳程度に肩に手を乗せておく。
「…すみません」
「……構わん。オマエが怪我で休む方が迷惑だ」
「…他の皆が煩くなるからですか」
「オマエの言うことは聞くからな」
「そんなこともないですけど…」
「そうだろう」
「…キミの言い方が悪いからだと思いますよ」
「当然のことを言っているだけだ」
「…キミはいささかまじめすぎるんだと思います」
「ボクの足だって。平気ですよ、これぐらい」
「だから休まれると迷惑だと言ったろう」
「…そういう言い方をするから折角優しいのに優しいと思わないです」
「……別に優しくなどない」
「優しいでしょう。いつもは絶対にこんなことしないくせに」
「オマエがオレの何を知っている」
「知ってますよ。もう、1年も一緒にいるんですから」
「…たった1年、だろう」
「もう、ですよ。キミだって、ボクのこと結構わかってるように思いますが」
「……」
「ボクに比べたらキミはわかりにくいですけどね」
「オマエの方がわかりづらいだろう」
「そうですか?」
「そうだ」
そして、家までたどり着く。
「…ありがとうございました」
「…ちゃんと冷やせよ」
「わかってます。まあ、歩かずに済んだので、そんなひどいことにはなっていないかと」
「そうか」
「はい。…緑間君も、気を付けて帰って下さいね」
「心配されなくても、オマエのようなへまはせん」
「馬鹿にしないでください」
「そんな怪我をする奴は馬鹿に決まっているだろう」
「…まあ、確かに不注意でした」
「疲れているなら無理はするな。つらいと言えばどこかで休めただろう」
「…どうせ文句を言われるでしょうけどね」
「……下らんプライドなど捨てろ」
「それをキミが言いますか?」
「…知らん。じゃあな」
「あ、はい。…お気をつけて」
「…ああ」
遠ざかる背を、見送った。
相変わらず広い背だった。