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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
お願いだからこっちを振り向かないでください。
黒子は突然そんなことを言って、火神の背に凭れ掛かった。
「は!?ちょ、おい!!」
「動かないでください」
「ぁあ!?」
騒ぐ火神をよそに、黒子は黙って凭れている。
眼を閉じて、ただじっと。
「…黒子?」
あまりにも静かで、火神は戸惑いながら尋ねる。
返事は返らなかった。
背にかかる体重は確かなものだったが、火神からすればそんな重み大したことはない。
妙に不安な気持ちになって、声を重ねる。
「どうしたんだよ…」
「…なんでもないんです」
「はぁ?」
火神はわけがわからないと声を上げる。
煩いです、と黒子は呟いて、少しだけ頭を動かした。
その仕草が甘える猫のようで、火神をいたたまれない気持ちにさせる。
「……」
「っ!?」
火神はいきなり黒子の腕を引っ張って自分の腕の中に引きこんだ。
黒子はあっさり火神の腕の中に納まり、火神の胸板に顔を押し付ける結果となる。
「…あの、こっちを見ないでくださいって言ったんですけど」
「うるせぇ。黙ってろ」
「……」
火神の、心音がすぐそこで聞こえる。
黒子はなんだか泣きたくなって、火神の背に手を回した。
泣きはしなかったけれど。
黒子を抱いていると、腕の中にいるのが男か女かわからなくなる。
本当に日本人は子供みたいな顔をしてるやつが多くて、あっちと比べると変な感じがした。
特に黒子は。
小さくて細くて、バスケなんかするようには見えないのに、それなのに、凄い。
そう認めさせられる。
それだけの奴なのに、変に抜けていて、危なっかしくてほっとけない。
しかし、よくよく考えれば男同士抱き合っているというこの状況ははたから見れば物凄い違和感に違いない。
いや、はたから見れば黒子は女にしか見えていないんだろうか。
そして自分がそれに違和感を覚えていないのが何より不思議だった。
「…すみません」
黒子がポツリとつぶやいて、手をだらりと落した。
腕を緩めれば、黒子の顔が見えた。
何とも情けない顔をしている。
どこにもいけなくなった、迷子のようだった。
「…どうしたんだよ」
「……」
黒子は、それこそ途方に暮れたように黙り込んだ。
何だか、幼気な子供を苛めているような気になって、火神は再び黒子を抱いた。
黒子は大人しくされるがままだ。
ここまでこいつが弱っているのも珍しい。
いつも強気で、余裕そうにしているのがこいつの常だと思っていた。
よくわからない。
よくわからない奴だ、本当に。
結局、そのままじっとしていた。
黒子は、ただ黙っていたし、火神も、別段沈黙が気まずいたちではなかったので、今日の夕飯何にするかなど適当なことを考えていた。
それでも、黒子は余計な言葉を必要としていなかったらしい。
ただ、火神に、全て委ね、目を閉じる。
「…帰りますか」
暫くして黒子がそう言って、火神はおー、と答えて、身体を離す。
そして、遅ればせながら帰り支度に入る。
何でもない様子で。
少しして、ありがとうございました黒子が言った。
火神は、何と返していいかわからず、ああ、とだけ返した。
その後は、まるで何もなかったようにいつも通りに過ぎて行った。
ぐだぐだしょうもないことを喋りながら帰路につく。
マジバに寄って、いつもの分かれ道で、別れるだけだ。
何も変わらない。
気まずさも、恥じらいも、そこにはない。
ただ、黒子の表情が、幾分か柔らかく火神に向けられていただけ。
といっても、火神は、全くそれに気付いていなかったけれど。