[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
キリ番10000を取って下さったスペルさんに捧げます。
テツ君は図書委員で。
木曜の昼休みが彼の担当。
これだけの情報はすぐに手に入った。
けど、何回か行ったけど、カウンターにテツ君の姿はなくて。
多分いるはずなんだけど、紛れるのが上手すぎて。
見つからないから、会えない。
部活中とかは、忙しくて全然話せないし。
他の奴らがいるとすぐに話を持っていかれてしまうから。
2人だけで話したかったの。
「…桃井さん、どうしました」
「…っえ?」
「いえ、さっきからずっと立ち尽くしてるので」
後ろにいたことに全然気づかなかった。
やっぱり凄い。
私だって、結構観察力はあるつもりなのに。
「あ、うん、えっと…。…何、借りようかなって思ってたの」
「…読みたいジャンルがあるなら、探すの手伝いますよ」
「えっほんと!?」
借りる本を持って来て話す予定だったけど、それでも、全然問題なかった。
「あっでも、仕事はいいの?」
「ボクは基本返却された本を元の棚に戻す係なんです。今はまだ早いので、返ってきた本が少ないですから」
つまり、暇だってことか。
そして、いつも彼がいない理由も、わかった。
そっか。
多分テツ君がカウンターだと気付かない人が続出しちゃうから。
「…じゃ、お願いしていい?」
「はい」
「……えっと。スポーツ医学の本、読んでみようかなって思って」
「…そうですか。熱心ですね」
ふっと緩められた眼元が優しい。
こっちですよと言って、歩き出した。
その後に続いていく。
滅多に人が寄り付かないような、娯楽ではない分野の本棚。
2人っきりだ。
でも意識しちゃうとまともじゃいられないから必死で考えないようにした。
本棚だけに目を滑らす。
「医学的な本だったら、この辺りですね。応急手当はだいたいこっちが充実してます。後、怪我の経過とか」
「そうなんだ…。あ、ホントだね、怪我関連は、やっぱり難しそう」
「テーピングの仕方とかストレッチの方でしたら、スポーツ系の本棚にあると思います」
「じゃ、とりあえず一冊。…これで、いいかな」
新しそうな、それほど厚くない本を手に取った。
外観では、内容はよくわからないけど。
「ゆっくり選びたかったら、席を外しますけど」
「ううん!…できたら、一緒に選んでくれたら、嬉しいんだけど…」
厚かましいかななんて思いながら、それでも言ってみた。
そしたらテツ君はじゃあ一緒に考えましょうかと言って、本棚に手を伸ばした。
目次とか、要項をぱらぱらと見て、選別していく。
崩れていない姿勢で、小難しそうな本を読んでいるのが、とても格好良くて。
見とれてしまう。
ちゃんとした姿勢が似合うのって、凄い。
「桃井さん、それ、見せてくれますか」
「っえ!っあ、うん!」
慌てて取っていた本を差し出した。
その時に指が触れて。
それだけで鼓動が跳ね上がる。
ああだめ。
こんなんじゃ、私。
まともに話できるようになる前に死んじゃうわ。
「…これと、これがいいと思いますけど。どっちにします」
「…えっと…」
「こっちは図が多いので、こっちの方がわかりやすいかもしれませんね」
「…じゃあ、そっちにする」
「はい。スポーツ系の本棚も見てみますか」
「うん」
ふわふわと浮き立ったままで。
進められた本をいくつか手に取って。
内容なんて全然頭に入らなかったけど。
とりあえず3冊借りることにした。
貸出期間は2週間。
多分何とか読めるだろう。
読めなかったら、延長してもいい。
「じゃあ、貸出手続してきます。出席番号何番ですか」
「あ、ありがとう」
番号を言ったら、テツ君は頷いてカウンターへと行ってしまう。
寂しいなんて、思うのは間違ってるんだけど。
どれだけ一緒にいたら、私は満足できるだろう?
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう。ごめんね、わざわざ」
「いえ。本当に勉強熱心ですね。尊敬します」
「…っそっそんな偉い人じゃないよ、私!」
さらりとそんなこと言われて。
私は、どうしたらいいの?
「桃井さんを見ていると、頑張らなくちゃいけない気になりますよ」
「…テツ君は、十分すぎるぐらい頑張ってると思うけど」
そう言うと、少し驚いた顔で見つめられた。
あ、ちょっと、踏み込み過ぎた発言だったかな。
四緑始終、見ていることはできないから。
ホントは、たいしたこと、知らないんだけど。
でも、それでも、大変そうだなってのは、わかる。
だってあの中にいて、まともな人が、振り回されないはずはないもの。
「ボクは平気ですよ」
「なら、私だって」
平気だよ。
そう言ったのだけど。
「桃井さんは、無理してもそれがばれない人だと思うので、よくないです」
その言葉に、体が止まってしまった。
「その時になってからじゃ遅いと思うので、ちゃんと休んでくださいね。愚痴なら聞きますから」
私のこと、ちゃんと見ててくれてたのかな。
胸が熱くて、ちょっぴり、泣きそうになった。
誰も、こんなこと言ってくれなかったよ。
「…ありがとう、凄く、嬉しい」
笑って、ごまかした。
流石にこんなところで泣くのは嫌だ。
ああ、これが、無理してるってことなのかな?
「また、何かあれば本借りに来てくださいね。小説でもなんでも、ご案内します」
「…じゃあ、今度さ。テツ君のおすすめの本を教えて」
するっと我儘を言ってしまった。
貴方のこと、もっと知りたいよ。
「いいですよ。どんな本がいいですか」
あっさりといい返事が返ってきて、驚いた。
別にテツ君が偏屈だとか、そういうことを予想していたんじゃないんだけど。
無関心そうに見えるのに、ホントは、すごくやさしいんだと思った。
まだまだ、何も知らなかったんだと思う。
「…できたら、恋愛の話がいいな。ハッピーエンドだったら、なおいいかも」
「……そうですね、いい本があると思います。来週の今日、また来られそうですか」
「ほんと!うん、来る来る!!」
そう言ったら、テツ君が笑った。
嬉しい。
もう、それだけでいいような気がする。
「じゃあ、ボクはちょっと業務に戻らないといけないので」
「あっうん!ごめんね、ありがとう!!」
「また、部活で会いましょう」
「…うん!」
カウンターに消えていく後姿を見送った。
こんなにいっぱい話せたのは、初めてな気がした。
やっぱり、素敵な人だった。
もっともっと知りたいなぁ。
もっともっと話したい。
とりあえず今日の所はこの本をしっかり読み込んで、それをテツ君に話そうか。
他の皆ならどうでもよさそうに聞き流しそうだけど。
彼だけはちゃんと聞いてくれる気がした。
とにかくもっと話がしたいと、素直に思った。
どんどん好きになっていく。
また来週ここに来よう。
それで、もっと教えてもらおう。
全然苦ではなかった。
負担なんかじゃなくて。
大変さよりも喜びが勝つ。
それだけで十分なの。
幸せって、きっと。
こういうことだと思った。
黒桃の萌えシチュをひたすら考えて13巻Q&Aで黒子が図書委員だということから着想しました。
好きな人の好きな本を読むのってちょっとリスクが高い気がしますが(笑)
でも黒子ならちゃんと桃井に合った本を拾ってきてくれそうです。
間違っても読みにくいの勧めたりしないよね。
その辺りは緑間とか赤司とは違うだろうなと思います。
しかし黒桃は似たようなパターンの話にばかりなっちゃいますね…。
こういうのが好きだからなんですけども。
もうちょっとひと工夫頑張りたいところです。
難しいなぁ。
というわけで、スペルさん、どうぞお受け取りください!
気に入らなかったら書き直し受け付けますので。
それでは^^
リクありがとうございました♪