いえ。…伊月センパイは、人より良くものが見えてるわけですよね。
…ああ、まあ。
なら、普通なら見えなくていいことも、見えてくるわけですよね。
……。
それって、結構、楽じゃないんじゃないですか。

…うーん、２つ、間違ってるな。
まず、イーグルアイってのは、見えた視界を、頭の中で立体的に立て直すだけだから、見えないものは見えない。
オレは人並みの視力だし、遠くの文字が人よりよく読めるわけじゃない。
物の位置関係とかがわかったり、一つのことしか見てなくて周りを見落とすってことが少ないぐらいだよ。
…そうですね。
…ま、高尾のホークアイかわしたこともあるんだから、わかってるか。
……。

それと、もう一つ。
やっぱり、つらいのは当事者なんだと思うよ。悩んで、荒れたりして。眠れなくなったり、変な方向にいっちゃったりして。
結局は自分を傷つけてるんだからさ。

…でも、それをどうすることもできずに見ているのも、つらいと思います。
……。まあ、少しはあるよ。でも、オレはどうやっても木吉みたいにはなれないからな。
…木吉センパイは、凄い、ですよね。
ああ、ほんとにな。日向を立て直してくれたのは、あいつだし。
…でも、伊月センパイだって支えになってたと思いますよ。見放したり、しなかったじゃないですか。
まあ、友達だしな。付き合い長いから、今更別れられないってのもあるよ。

…でも、それだけじゃないですよね。
…。鋭いな。あのまま放っておいたら、どうなるか、怖かったのも、あるかもしれない。

…何か言って、無理やり強制させる手もあったと思います。
でも、それじゃ結局日向は、すっきりしないままだ。結局また崩れて、今度は、もっと酷くなったんだと思うよ。
……そうやって見通せるところが、凄いんだと思いますよ。
…そうかな。
むやみに手出しをしない方がいいってこと、わかってても、中々そうできる人っていないと思います。
そんなに、褒めなくてもいいって。


でも、それって、いつも損してませんか。
…？
感謝されることの少ない立ち位置じゃないですか。当たり前すぎて、顧みられないぐらい。
…オレは、それでもいいと思ってるからな。
…損な生き方、してますね。
まあ、オレも今の誠凛が居心地良いから、いいんだよ。オレはどうやっても、日向みたく熱くはなれないし。

…大人ですね。
冷めてるんだよ。黒子は、結構熱いよな。
…そうかもしれません。
そういう奴は、それでいいんだと思う。後ろのことは気にせずさ、頑張ってくれたらいいんだよ。
サポートも、結構面白いし。わかるだろ？
…はい。それは。

だから大丈夫だよ。大変だと思ってないんだから。
…凄いですね。
お前だって凄いさ。だから、気なんて使うなよ。
…ハイ。
よし。

あ、でもつらかったら言っていいからな。オレが我慢してるからとか思うなよ。
…センパイ、いい人ですね。
いやいや、オレはほんと無理してないから。だからそんなオレに遠慮はするなってこと。
大丈夫ですよ。ボクも、ここは、居心地がいいので。
…そうか。なら、いいのかな。
はい。心配しないでください。

…なんで、２人して心配すんなって言い合ってるんだろうな。
まあ、いいんじゃないですか？思っていることを言えないほうが問題あると思いますし。
それは、そうか。
はい。