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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
キリバン7000を踏んでくださったナナイチさんに捧げます。
(若干リクと違うような気もするので気に入らなかったらご連絡ください。新しいの書きます)
「あっミドリン!今日誕生日だったよね、おめでと!」
桃井さんが傍を通り過ぎながら、そんなことを言って、明るい笑顔を見せた。
練習の合間の短い休憩時間、理由もなく、緑間君の横で時間を過ごしていた時。
当の彼は、大して嬉しくもなさそうな態度で、ああ、と返しただけで。
まあ彼女はそういう対応には慣れているところもあって、それ以上追及したりするようなことはなかったが。
青峰君も興味がないことに対しては、酷く適当だから。
「…今日、誕生日だったんですか」
「…そうだ」
「おめでとうございます」
「…ああ」
反応が淡白すぎて会話がすぐに終わってしまう。
「…多分、他に覚えてる人いないでしょうね」
「…だから何だ」
「いえ。…折角の誕生日なのに、勿体ないと思っただけです」
「別に、お前たちに何かしてもらおうなどと思ってはいないのだよ」
「…そうですか」
「ああ」
「そう言われてしまうと、何もしなくていい気になりますね」
「…だから、しなくていいと言っている」
「まあ、何をしてもキミは喜んでくれそうにないですけど」
「わかったような口をきくな」
「じゃあ、何をしてもらったら嬉しいんですか」
「……」
顔が、歪められる。
ああ、また何か鼻につくことを言ってしまったか。
別にイラつかせたいわけではないのだが。
どうも彼は、よくわからない。
いつまでも返事が返ってこないので、諦めた。
大方、願い事がないのか、こちらに腹を立てているかのどちらかだ。
立ち上がって、彼を、見下ろす。
珍しい視界。
「帰りに、どこか寄りませんか。奢ります」
「…随分と安い解決法だな」
「仕方ないじゃないですか。事前に教えてもらってもいませんでしたし」
「…星座くらいわかっていただろう」
「星座の時期なんて普通の人は自分のぐらいしか把握してませんよ」
「少しは気にかけておけ」
「…ボクは、天命を待つなんて、ガラじゃないんですけどね」
「……」
「…すみません。何も、誕生日に否定することもないですね」
「否定せずともその通りなのだろう」
「…まあ、相容れないのは確かですけど」
「なら、別に誤魔化すこともないだろう」
まあ愛想笑いしながら話を合わせるよりはましだと思うが。
それでも、わざわざ不快にする会話を避けるというのも、上手く生きていく秘訣だろう。
「…緑間君は、良くも悪くも真っ直ぐですよね」
「…なんだ」
「いえ。褒めてるんですよ」
「褒めているようには聞こえなかったがな」
「それは、キミが穿った見方をしているからでしょう?」
「オマエの言い方が屈折しているんだ」
「で、どこに行きましょうか」
「……」
「生憎と、おしるこが置いてそうな店に心当たりはないんですけど」
「人を誘うつもりなら、それぐらいのあては用意しておくものだ」
「突然でしたから」
「…なら、いい茶屋を知っている」
「…渋そうですね」
「そこでいいか」
「はい。キミが行きたいところでいいですよ」
「…そうか」
「あんまり、値段の張るところでないとありがたいんですけど」
「…別に奢ってもらわなくとも構わん」
「…それじゃ、誕生日の意味なくないですか?」
「……オマエにたかろうなどと、初めから考えてはいないのだよ」
「プライドの高い人ですね…」
帰りを合わせて、向かったのは、和風な趣の、木目の美しい店。
学生向けには見えない、品格。
店内にいるのも、少し年をとった感じの落ち着きのある人々で。
夕食のメニューも出ているのだろう、小分けした皿に、様々な料理が添えられているのがわかる。
「…凄く高そうなんですけど」
「そう飛び抜けて高いわけでもないさ」
「……」
「こっちだ」
何度も来ているのだろう、慣れた仕草で壁際の席に向かう。
浴衣の女性がお茶を運んで来て、食事かお茶かを尋ね。
緑間君がお茶で、と返した。
慣れていると、一目でわかる。
「…落ち着いた雰囲気のお店ですね」
「ああ」
「いつも、1人で来るんですか」
「それか、家族とだな」
「ああ、そうですね」
「何か、食べたいものはあるか」
「…えっと。冷たいものがありがたいですけど」
「そうだな、なら、寒天はどうだ」
「じゃあ、それで」
「わかった」
彼は相変わらずのおしるこで。
ほどなくして、それらが運ばれてくる。
派手ではないけれど、控えめな器に、涼やかな透明の寒天と添えられた餡子は不思議に生える。
毒々しいチェーン店とは、品格が違う。
匙で掬って、口に運ぶと、つるりとした食感と、くどくない餡の甘みが口に広がる。
「…美味しい」
「…そうか」
「すごく、繊細な味がしますね。ただ、甘いだけじゃなくて」
「和菓子と言っても、色々なものがある」
「はい。…冷た過ぎないので、胃にも優しそうですね」
「…夏バテか」
「…そこまでではないですけど」
「なら、むやみに冷たいものを食べるな」
「でも暑いんです」
「我慢しろそれぐらい。最近は冷房も効いているだろう」
「それも、よくないんですよね」
「…冷えるのか」
「汗かいてると、ちょっと寒い時ありません?」
「まあ、それは確かにな」
店内は程よい温度で、寒すぎもなく、暑すぎもしない。
出されたお茶は飲み干せる程度にぬるく、身体を冷やすのを食い止めてくれていた。
「…こっちも食べてみるか」
「いえ、悪いので、」
「構わん。食べてみろ」
「…はい」
半ば強引に押し切られる形で、お汁粉を口にした。
まあ、確かにどんなものか気になるところではあった。
冷製のお汁粉はなめらかで、もちもちした白玉がいい味を出している。
甘いのに、どこかすっきりとしていて、後口が爽やかなのがすがすがしい。
「…凄いですね、本当に、美味しいです」
「…そうか」
素直に褒めると、彼の口元が、少し緩んだ気がした。
…珍しいものを見た。
彼は頑なで、意見を決して曲げないから、その主張はどちらかといえば否定されがちだ。
でもそれは、こっちの態度にも、少し問題があったのかもしれない。
ただわからないと、どうしてそうなのかと、思っているだけでは、何の理解にもつながらないと、思った。
だがまあ謝罪するというのも今更だし、癪で。
これからは、少し彼の言い分も聞こうと思うだけに留める。
「ここの味になれてしまうと、よそのなんて、食べられそうにないですけど」
「まあ、それはそれで味があるものだ」
「なるほど」
面白い人だ。
妙なこだわりと、その中での妥協点。
中々実態を掴むことはできないけれど。
当たり障りのない付き合いを続けていく上では、酷く扱いにくい人だけど。
その内面を知っていくのは、悪くないかもしれないと思う。
「…ごちそうさまでした」
「ああ。…じゃあ、出るか」
「そうですね。親御さんも待ってるでしょうし」
「…ああ」
彼はさっさと歩いていき、会計に向かう。
慌てて鞄を背負って追ったけれど、追いつくころには既に払ってしまった後だった。
確かにそれほど高い額ではなかったけれど。
「…すみません、払います」
「…いや、いい」
「いえ、誘ったのはボクですし」
「そろそろ食べたいとは思っていたし、いい機会だったからな」
「…それでも、こっちが払ってもらう理由にはならないです」
無理にでも払おうとすれば、いらんと切り捨てられる。
やっぱりわからないかもしれない。
早くも諦める気持ちになる。
「結局ボクは何もしてないじゃないですか」
ただご馳走になっただけだ。
「…もういいと言っているだろう、強情な奴め」
「キミの言ってることが理解できないだけです」
「…何かしないと納得しないのか」
「そういうわけではないですが…」
何かすっきりしない。
そう思っていると、頸に手を添えられ引き寄せられた。
「!?」
目前に迫るのは彼の顔で。
唇をかすめた、柔らかい何か。
彼はすぐにそっぽを向いてしまったけど。
思わず口元に手をやる。
「…餡がついていたぞ」
冗談じゃない。
食後に、ちゃんと拭いたはずだった。
そもそもここまで気付かなかったはずもない。
しかもこんなやり方をしないだろう、キミは。
何より、それならどうしてこちらを見ないのか。
「帰るぞ。明日の練習に差し支える」
なんなんだ。
さっぱり意味が分からない!
文句をつけたらいいのか理由を問うたらいいのか、考えることもできなくて。
ただ、彼の後に続くだけ。
ああ、もう。
やっぱり、彼はわからない。
オマケ
「あれ、テツ君は?」
「あ、なんか緑間っちと用事があるとかでさっき出て行ったけど」
「そうなんだ…」
「何か用事?」
「あ、ううん、別に明日でも全然問題ないことだし。…でも」
「でも?」
「…今日、ミドリンの誕生日なんだよね」
「…っえ!?それって、ひょっとして…」
「いや、そーゆーことじゃないのかもしれないけど…」
「でもデートじゃないッスか!?それ!?」
「…わざわざ2人っていうとこがね…」
「っちょっと!追わないと!!」
「でもどこ行ったのかわかんないでしょ」
「…!!うわー、オレも無理言ってついてけばよかった…」
「まあ、ミドリンのことだからいきなりそんなことにはならない気がするけど…」
「桃っちはわかってないッス!男なんていつだって狼になれるんスよ!!」
「…まあミドリンは思い込んだら突っ走っちゃいそうだけどね」
「それッスよ!!あー黒子っち~無事でいて…!!」
それがなんでしょう、緑間が勝手に動いてしまいました(汗)
そのせいでこれほのぼのにカテゴライズしていいの?という出来に…orz
見てるだけならほのぼのですけども当事者からしたらとてもほのぼのじゃねーよ!みたいな(汗)
とりあえず、ナナイチさん、返品受け付けるので遠慮なく仰ってください><
緑間は古風なので黒子にお金使わせるのとか嫌がりそうだなと思いました!
まあ黒子こそそういう枠に収まりたくない人だと思うんですけどね(笑)
因みに和菓子屋さんは滋賀に旅行に行ったときの、たねやっていうところを参考にしました。
本当に美味しかった…。
なんでしょうね、地元にあんまり和菓子を愛でる風習がないので、本格和菓子とか憧れます。
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