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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
日が昇るはずの方角を見ていた。
赤みを失っていく、沈んでいく日に背を向けて。
空気が橙に染まり、息をすれば肺の中から色を書き換えられてしまいそうになる。
高熱の窯の中で、焼かれていくようだった。
鮮やかな朱。
落とされていく影は、さながら、燃え尽きた残骸か。
ふと全てがどうでもよくなって。
屋上のフェンスに手をかけた。
少しばかり汚れてはいるが、錆はどこにもなく、体重をかけても全く問題なかった。
そのまま乗り越えて、向こう側に足をついた。
もう一歩踏み出すだけで、ぎりぎりだ。
落ちれば、きっと死ぬだろう。
この高さなら、失敗することはありえまい。
超えてしまえば、意外とあっさりしたものだと思った。
気の迷いだけで超えてしまえる代物だった。
この先に足を踏み出そうとは、思わなかったが。
その時が来たら、簡単に、踏み出せてしまえることを知った。
知ってしまった。
そのままぼんやりと底を見つめていたら、視界の両脇から腕が伸びた。
長く、均整のとれた腕。
そのまま抱きすくめられる。
フェンスの都合上、頸に腕を巻きつけられるようになる。
折角止めてくれているのに、これでは、逆に殺そうとされているみたいだった。
思わず笑ったら、祈るように頭が寄せられた。
そんなに心配することはないのに。
ボクはキミたちに必要とされているうちにここを飛ぶことはないのだから。
「服が汚れますよ」
声は自分で驚く程に穏やかだった。
不思議な安堵感。
彼とボクの間に、通じ合えることなどもう何一つないような気がしたのに。
そんなこともうどうでもいいことのように思えた。
一緒に飛んでしまいましょうか。
その言葉だけ呑み込んで。
振り返ったボクを、彼は、縋るように抱いた。
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