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黒子のバスケの2次創作ブログ。 キセキ中心の黒子受け雑食(黒桃有)で文章書いてます。お勧め→◇
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休日に久しぶりに使った電車の中で、オレは、見つけてしまった。

会ったという言葉を使わなかったのは、ソイツが、寝てたから。
 



座席の隅に座って、舟を漕ぐこともなく、ただ眼を閉じている。


相変わらずの様子だった。
膝の上に載せられた文庫本も、何もかも、あの頃と、まったく変わらない。

どこかに逃げてしまおうかとも思ったが、既に荷物は網棚に載せてしまっていたし、何より人が多すぎて、そんな気にはなれなかった。

かといって、どうしろというのだろう。


コイツが目を覚ますことも、眠り続けることも、それはそれで嫌だと思った。


声が聞きたい。

眼が見たい。
コイツの、決して屈さない真っ直ぐな眼差しが。


でも話すことは何もない。



こんなところで会ってしまったって、口もきかずに別れるのが関の山だった。





だってわかりあえない。


それがわかっているのに、今更話をして、何がどうなるというのだろう。





電車は次々に駅に止まっていく。

その度に人々は出入りしていくのに。
オレ達だけが、何も変わることができなかった。


声をかける勇気もなく、今更気づかなかったふりもできないまま。



それでも電車は容赦なく進んでいく。

次の駅が、コイツの降りる駅だった。

それでも起きる気配がない。
疲れてるんだろう。



結局、ほっとくことが、できなくて、手を伸ばした。

「…テツ」

声を出すことを、こんなに躊躇したのは初めてだった。
額から指を滑らせるようにして、触れた。

柔らかな髪の感触。
なめらかな肌。
開かれる瞳。





ああ、ここはどこだろう?





何もかも、あの頃のまんまじゃねぇか。






「…あおみね、くん」


ぼんやりと、名を呼ばれて。




その瞬間に、全身に痺れるみたいな衝撃が走って。




オレは、思ってた以上に、コイツに会いたかったんだと思った。






わかりあえなくても、敵同士でも、話すことなんて何もなくても。











「次。降りる駅だろ」

少し躊躇して、そう声をかけた。
ぶっきらぼうな声になる。
言いたいのはこんな言葉じゃない。

「…そうみたいです」

相変わらずずれた調子。

そうじゃねーだろと。
普通、もっと慌てたりするだろと。

笑って馬鹿にしたかった。

頭を乱暴に撫でて、やめてくださいと怒られて。
それでも律儀に礼を付け加えられ。
また明日と、別れていた、別れることができた、かつてのように。





電車が、速度を落としていく。
テツが、立ち上がる。

予想外の揺れに、ふらついたのを支えてしまったのは、あの頃の癖だろうか?



今更遅すぎる感傷に襲われている。






眼を閉じればすぐにでもあの頃に帰られる気がするのに。






「…すみません」
「…いや」
「…起こしてくれて、ありがとうございました」

最後に、テツがオレを見た。

自然と上目遣いになる距離。
引き寄せてしまえば、簡単に連れ去ってしまうことができるのに。





オレはそんなことがしたいんじゃなかったからできなかった。





ただかつてのように傍に居たいだけだったのに。












何がどうしてこんなに変わってしまったのか。











「それでは。…あんまり、桃井さんを困らせないようにしてくださいね」
「うるせぇよ」
「…また、会いましょう」
「……ああ」


なんにも実のない会話。

それだけに変にエネルギーを使っているのが馬鹿らしかった。



互いにもう視線を向けることはなく。

電車の扉に阻まれて。



距離は、開いていくばかり。















あの時、テツが穏やかに微笑んでいたのを思い出した。





それは思っていたよりも、随分価値のあるものだったみたいだ。















こんなものもオレはなくしてしまったんだなあと。




今更になって、気が付いた。













ホントに、今更だった。










 

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