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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
電話が、鳴った。
卒業式を終えた、長い春休み。
家には黒子以外誰もいなくて。
何の気なしに電話を取ろうとして。
表示された番号に動きを止めた。
見間違えようがあるはずもない、彼の、電話番号だった。
かつて、何度も連絡を取り、作戦を語り合った。
そのくせ、黒子が消えた後、一度も連絡をよこさなかった。
それが、今になって。
何のつもりかと。
驚きに停止した頭は、電話を切ることも、取ることも、選択してくれなくて。
自動的に留守電に移行された音声が、流れ出す。
『…もしもし。帝光中の赤司です。テツヤ君に電話しました』
余所行きの、丁寧な口調。
少し間をおいて、声は続ける。
『…テツヤ。明日、東京を発つよ』
そうか。
もう、行ってしまうのか。
こんなにあっさり行ってしまえるものなんだな、と、妙に冷静に思う。
『もう、皆で会うこともなくなるな』
声は妙に哀愁に満ちていて、よそよそしい。
どこまでも作り物めいて響いた。
『お前が途中で消えるから、ろくになにもしてやれなかったよ』
何かするつもりがあったのかと、聞きたい。
『お前は面白いヤツだった。楽しかったよ。世話になったな』
やめてくれと。
思った。
こんなことが聞きたいんじゃなかった。
彼らと戦った日々は、黒子にとって、まだ昔のものではなかった。
生々しい傷跡として、まだ口を開けている。
塗る薬も、手当する方法もなく、ただ、傷が癒えるのを待ち、蹲ることしかできない。
それなのに彼らはもうそれを過去のものにしてしまって歩き出してしまった。
『1人になって、得るものはあったか?もう何もしてやれないけど、お前の幸せを願っているよ』
映画のセリフのような言葉だ。
けれどその言葉は黒子を苛立たせるだけだった。
ただ確信する。
この男は、自分を傷つけるそれだけのために、電話をしてきたのだと。
『また皆で会える日が来るといいな』
ガチャン!!
乱暴に、切った。
聞きたくなかった。
聞きたくない、何も。
一見優しそうなヴェールを纏った、悪意たっぷりの言葉たち。
何もするつもりはないのだろう?
何を得ることもないだろうと、わかっているのだろう?
幸せになんかなれないと、わかっていて、幸せを願うなんて、安っぽい言葉を投げて。
全て傍観者として。
遠いところから、語られる無責任な言葉。
もう手を離したから、もう関わるつもりはないから。
勝手に生きてくれと言われているようなものだった。
わかっていて言葉を選んでいる。
優しく語りかけてきた。
あの頃のボクならその真の意味を知りながら、言葉の優しさに絆されてしまうかもしれなかった。
でも今は絆されることもできない距離が開いてしまったことを、思い知る。
どうしようもない、違い。
だって彼はもうボクを必要としてはいなかった。
もういらないなら、今更ボクが歩み寄れるはずなどない。
歩み寄るつもりなんてもともとないけれど。
こんな言葉なんて、欲しくなかった。
残酷な最後通告。
よくも電話をよこしたものだ。
それでも、これで終わらない予感はあった。
そしてすぐにそれは的中する。
再び鳴り始める電話音。
番号を見ることもできない。
うるさい、うるさい、うるさい。
切ってしまわなければならない。
それなのに動けない。
身体が重くて、震えて、何の選択すらできない。
音が、止んだ。
痛いほどの沈黙の中、その声は、最後の言葉を発する。
『 じ ゃ あ な 』
ああ。
切れてしまった。
もう2度と繋がらない。
もう2度と、元に戻れる気がしない。
この時、黒子の3年間のバスケは、確実に終焉を告げられた。
終わってしまった。
溢れだした涙は、止まる気配がなくて。
そのまま崩れ落ちて、蹲った。
全てのものが価値を失って。
色を失い、褪せていくようだった。
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