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黒子のバスケの2次創作ブログ。 キセキ中心の黒子受け雑食(黒桃有)で文章書いてます。お勧め→◇
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暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
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(いつかの未来の緑間と黒子)


扉を開けると、そこに、黒子がいる。

その光景に慣れるまでに、暫くかかった。
 



黒子がうちに転がり込んできたのは、もう1月ほど前になる。
家を出て1人暮らしを始め、落ち着き始めたころ。
大きな手提げを抱えて、駅にいたコイツを偶然見つけた。
声をかけると、酷く驚いた顔をして、振り向いた。

何故見つけられたのかは、わからない。

あんな人の多い場所で。
そこにいると知らないアイツを。
見つけることなど、通常、あり得なかった。

黒子の眼にはいつもの光がなく、様子もおかしくて。
どこに行くのかと問えば、言葉を濁した。
急ぎなのかと問えばそうではないと答えたので、半ば強引に家に寄らせた。

「1人暮らしを始めたんですね」
「まあ、そろそろ独り立ちせねばなるまい」
「…緑間君は長男なんですから、家を継げばよかったんじゃないですか」
「そこまで立派な家でもないがな」

黒子はひどく落ち着かない様子だった。
珍しい。
素直に感情を表に出すような奴ではなかったのに。

「で、いったいどこに行くんだ」
「……」
「なぜ黙るのだよ」
「………」

はっきりしない奴は嫌いだった。
こいつは嫌味だが大抵小気味いいほど爽快な返事をしたのではなかったか。

「言えないならせめてその理由が言えないのか」
「……」

ため息をついた。
これ見よがしに。

全く話にならない。

飲み干してしまった茶でも入れなおそうと席を立った。

「…目的地は特にありません」
「…何?」

突然呟かれた言葉に、振り返る。
黒子は俯いている。

見慣れない。
見慣れない光景だ。

「…どういう意味だ」
「……どういう意味でもありません」
「…禅問答をする気はないのだよ」
「…いなくなるつもりです」
「…!?」

訳が分からなかった。

「どこから」
「…すべてです」
「…死ぬつもりか」
「……」

返事はない。
詰め寄り、こちらを向かせる。
黒子は抵抗しなかった。
眼を閉じて。
生贄のように、為されるがまま。

「…どういうつもりだ」
「…もう、いいんです。…もう、満足したので」
「何を…」

手が添えられる。
冷たい掌。
バスケをする手では、なくなりかけている、滑らかな手。

「ボクはもう必要とされないので。…いなくなっても、誰も、気が付かないでしょう。だから、もういいんです」
「…オマエの言っていることは滅茶苦茶だ。何故自分の為に生きられない」
「ボクにできることなんて何もありません。したいこともありません。なら、生きていてもしょうがない」
「馬鹿者。…お前は何もわかっていない」

早計にも程がある。

「緑間君が何と言おうと、ボクの性質は変わりませんし、何も、変えることはできません」
「っ!…随分と、言ってくれるではないか」

落ち着けと、言い聞かせる。
黒子のペースにのまれては駄目だ。

息をつく。

「大体、ボクがいなくなっても、緑間君は困らないじゃないですか」
「馬鹿かお前は。こんなことになって、気にならない者がいるものか」
「…それは、そうかもしれませんが」

黒子は、黙り込む。
一見納得したかのようにも見える。
しかし、コイツは決めたことは必ず実行するだろう。
わかっていた。
コイツは、そういう人間だ。

四緑始終監視することなどできない。
気が抜けたころを見計らってコイツはいなくなるだろう。

そうわかる。
長い付き合いだからこそ、いがみ合ってきた仲だからこそ、それがわかる。

一度見失えば見つけることは酷く困難で、生死の確認ですら、できないに違いない。


それならば。

「それなら、オレがオマエを必要とする。ここに住め。どこにも行くな」
「はい?」

会話の方向性が突然変わったことについてこれなかった黒子が、間抜けな声を上げる。

「オマエは居場所が欲しいのだろう?ならば、ここを居場所にすればいい」
「…意味がわかりません」
「わからなくても構わん。オレが困るから勝手にいなくなるな」

黒子は、酷く驚いた顔で絶句している。

結論が出てしまえば簡単なことで、オレは改めて台所へ向かう。
茶を入れなおして戻ると、黒子は疑わしげにこちらを見上げていた。

「…なんでそういう結論になるんですか」
「別に構わんだろう」
「…どうせ、すぐに嫌気がさすんじゃないですか」
「さあ、どうだろうな」
「……」

黒子はついに黙り込む。

布団は、今の季節なら予備で代用が効くだろう。
皿やコップも最低限は用意してある。
無ければ買いに行けばいい。
暫く暮らしていく分には何の不足もないだろう。

「…恋人ができたら、どうするんですか」

ややあって、黒子がそう口を開いたが、オレは鼻で笑ってやった。

「そういう予定はないな」

結局黒子は黙らざるを得ない。

コイツは、本当に自分の価値に気付いていない。
誰もが、当たり前に存在していてほしいと感じているだろうに。
それに気付かず、いつも、1人で、孤独になる方へ、向かう。

何故わからないのか。
少しはわかればいいと思った。

よくわからない奴だとは常々思っていたが、いらないと思ったことなど、それこそ一度もないのに。




そうして、オレ達の共同生活は始まりを告げた。


基本的に家事は分担制だ。
といっても黒子は料理が得意ではないようなので、黒子は洗濯を担当することが多い。
掃除なども、大概は勝手にやっている。
一日中家にいるので、中々退屈であるらしい。

PCを自由に使う許可を与え、たまに本を買ってやる。
どちらかといえばオレの趣味による決定であるから、文句を言われることが多いが、それでも読むのだから問題はないのだろう。

「おかえりなさい」
「ああ」

最初は、この部屋に誰かがいるということが不思議だった。
家に帰れば、玄関が綺麗になっていたり、簡単な食事が整えられていたりする。
触られたくないところを触られることもあったが、1度言えば2度と手を出さないようになった。

全力で嫌われようとはしないところが、コイツらしい。

しかし慣れなくても、平然と部屋の空気に溶け込むので、そこまでの違和感は感じなかった。
少食だからそれほど食事の量を増やす必要もなく、生活は楽になっただけで、苦労することはなく。

「…何、見てるんですか」
「いや。なんでもない」
「……」

台所に立ち、食事の準備をする。
出る前に下ごしらえはしておいたので、少し手を加えるだけでいい。

「…そろそろ、飽きませんか」

黒子が、呟くように聞く。

もう何度も聞いた質問だった。

「いや、飽きないな」
「…そうですか」

黒子は、ここへきてから、一切自分のものを増やそうとはしなかった。
使っていいと金も与えたのだが、手を付けた様子はない。

いつでも出て行けるように、だろう。

その頑なさが疎ましい。

さっさと根付けばいいものを。


だが、少しは状況を楽しんでいるようで、減らず口は増えてきた。
表情もいくらか回復してきた気がしている。

それが、不思議と誇らしい。


ずっとここにいればいい。


自分がそう素直に思ったことが、少し意外だったが、けれど、それでいいと思った。
この共同生活を素直に楽しんでいる自分がいた。

コイツの意見を変えることができなくても、ここに無理やりいさせ続けられるなら、それでもいいか、とも。

自分がおかしいとは思ったが、それでも。
その通りなら仕方なかった。





 

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