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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
やられた。
自分が、色々とよく思われていないことは知っている。
ありがたいことに、私は顔もまあまあ良く、スタイルもよく生まれついた。
だから、中学でも呼び出されて告白とか、そういったことは幾度もあった。
それに、私は青峰君と仲が良くて、それでバスケ部マネージャーだから、男子と一緒にいることが多い。
でも、そういうのって、女の子によく思われないものなのだ。
女の子って、面倒くさい。
同じテレビを見て、同じような話をしなくちゃいけない。
おしゃれをするのって、初めは、男の子に可愛く思われたいからじゃなくて、
友達に釣り合うようにするような気だってする。
色んなブランドを知ってなくちゃいけなくて、格好いいタレントのチェックは欠かしちゃいけない。
そんな暇があるなら、私、バスケの試合でも見ていたいよ。
そして陰湿だ。
影で悪口を言ったり、無視したり、仲間外れにしたり。
目に見えないようにするのが、上手だ、とっても。
それに使ってる労力をどうして他のことに使えないんだろう。
すっごく可哀相だ。
きっとその子たちは、本当に楽しいことを知らないのだ。
夢中になること。
それしか見えなくなること。
すっごくすっごく大変なのに、楽しくて、それが嬉しい。
---可哀相だ。
そう思っているのに、堪らない。
下駄箱に入れておいた靴がなくなっている。
隠されたか、捨てられたか。
ギュッと歯を食いしばって、泣くのを堪える。
鼻がつんとした。
泣いてたまるか。
泣いたら思うつぼだ。
私は負けない。
青峰君に頼らなくたって何とかしてみせるし、心配なんかされなくたっていい。
でも、これじゃあ帰れない。
仕方ないから上履きで帰ろうかと、半分諦めて玄関に向かうと、見慣れた人影がそこにいた。
「…テツ君」
「…桃井さん」
今まで、自主練をしていたのだろうか。
練習が終わった後、使わない道具を片付けて、さっきまで監督と赤司君と話し込んでいた。
もう、皆帰ったころだと思っていた。
「女の子が、遅くまで残るのは危ないですよ」
「あ、うん…ありがと、ちょっと話し込んじゃっただけだから」
笑って見せる。
違和感はなかったと思うけど、自信はない。
テツ君は、何でも見通せるみたいで、いつもあっさり、こっちのことを見抜いてしまうから。
「テツ君こそ、もう帰らないと。まだ、誰か残ってるの?」
いいえ、と、テツ君は首を横に振った。
最近は、皆が残って練習することも、少なくなっていた。
レギュラー以外は、もう、レギュラーになることを諦めてたし、
レギュラーはレギュラーで、練習なんかしなくても勝てるぐらい強かった。
むしろ、練習しすぎて体を壊さないよう注意して見ていなくちゃいけないぐらいで。
「無理しちゃだめだよ、身体壊したら、元も子もないもん」
「はい、別に異常はないですから。…あの、帰らないんですか」
ついに、聞かれてしまった。
慌てて、ごめんと答える。
「忘れ物しちゃった。取りに行ってくるから、テツ君は先帰ってて」
笑ったけど、効果はなかったかもしれない。
返事を待たずに校舎の中に走った。
どうしよう。
どうしようもないよ。
多分テツ君はもう気付いただろう。
だっていつもの私なら、一緒に帰りたいって、絶対言うもの。
何かがおかしいってことぐらい、馬鹿でもわかる。
でも、どうしようもなかった。
憐れまれたくなかった。
同情なんかされたくなかった。
自分が、情けなくて堪らない。
涙を止めることができなくて、暗い校舎の中に蹲る。
運動している部活で便利なのは、いつもタオルを持っていることだ。
拭くものに困らなくて済む。
そこで、暫く蹲っていた。
お願いだから誰も来ないでほしいと思った。
でも暫くしたら本気で暗くなってきたから、そこにいるのは諦めなくちゃいけなかった。
あんまり帰りが遅くなったら、お母さんに心配されるだろうし。
でも、上履きで帰ったら、結局心配されちゃうかな。
何だかいろんなことが馬鹿みたいで、凄く凄く情けなかった。
玄関に行くと、靴が、揃えて置いてあった。
隠した人間が持ってくるはずなんてないから、辺りを見回したら、いた。
玄関の照明の明かりで、本を広げて、こっちを見ていた。
わざわざ明りがいるところにいるのに見えないなんて、すごいなぁと、
変なところに感心してしまって、何だか、笑えてしまった。
「テツ君、幽霊みたい」
「ちゃんと本物ですよ。…帰りましょう。送っていきます」
「…うん」
妙に素直な気持ちになって頷くと、靴を履いた。
少しだけ、土がこびりついている。
多分、外に投げられていたんだと思った。
テツ君が、拾ってきてくれたんだろう。
何で、この人はこんなに格好いいんだろう。
優しくて、強くて、暖かい。
多分、靴が見つからなかったら、テツ君の靴を貸してくれたんじゃないだろうか。
それで自分が上履きで帰ることになっても。
「テツ君、ありがとう」
「…はい」
テツ君が、好きだ。
強くそう思う。
されていることは少ないのに、守られていると思う。
魔法のように。
「ねぇ、テツ君。私、皆がバスケしてるの見るのが好きだな」
「はい」
「すっごく、スカッとする。嫌な気持ちとか、全部、なくなっちゃう気がするの。わかる?」
「はい。皆、本当にすごい選手ですから」
「勿論、テツ君もだよ。全部がうまくいってるのを見ると、もう、感動で泣けちゃうの。
私、この瞬間の為にマネージャーしてるんだなって。本当に、思う」
「僕も、僕のパスでシュートが決まるのを見るのが、一番好きですね」
「うん。うん」
わかる。
すごくよくわかる。
それでテツ君がうれしいこともわかるし、そうやってくるパスを皆が爽快に感じていることも。
見ていればわかる。
そのときだけは、私の心も、あの中で、生きている。
「それだけのために、生きていられたらいいのにね。高校なんて、行きたくない。
就職なんかしたくないよ。ずっと、バスケの為に生きていたいね」
「そうですね…」
テツ君は、私が本気で言ってないって、気付いてた。
だから、戒めることも、諭すこともしなかったんだと思う。
これを言ったのがきーちゃんとかだったら、ぼろぼろにされてただろうな、とか思う。
夢と希望だけで、本当に生きていけたら。
キラキラしたものだけを追いかけて。
どこか、遠いところに行きたいと思った。
行くことは、できないんだけど。
ただ、夢見るだけ。
私たちにできるのは、永遠にも等しい、喜びの一瞬を、ただ追いかけるだけ。
街の光で空はすっかり明るくて、星なんかほとんど見えなかったけど。
小さな星が、ほんの少しだけ見えた。
生きていくってそういうことなのかなって、ちょっとだけ思った。
今の青峰には絶対に甘えられないと思うので、黒子に癒されているといい。
ほんと、キセキってなんだ、癒し系がいないんだなぁ…
めちゃくちゃな形をしているのにある角度でだけ絶妙に噛み合うジグソーパズルみたいな。
青峰と黒子も好きなんだけど、今の私には青峰はちょっと難しいな…。
ストックとか放置のやつも、青峰だけいないという(笑)
赤司もいるのに…
大勢動かせるように、もっともっと文章が上手になりたい。
頑張ります。
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