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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
急な雨に追われて逃げ込んだ軒先で、止まない雨に捕らわれて立ち尽くす。
学校を出るときから危なげな予感はしていた。
予想通り、あっという間に降り出して、もうびしょ濡れだ。
今更傘を買う気にもならない。
もうすぐ夏を控えるとはいえ、季節の変わり目は温度が変わりやすくで困る。
寒い。
すっかり濡れた服は冷たく、どんどん体温を奪っていく。
このまま立っていても雨は止まないだろう。
家まで暫く距離があり、雨脚もちっとも弱まらないせいで、ちっとも走り出す気が起こらなかった。
途方にくれて俯いて、眼を瞑る。
1人でいるのは得意だ。
中学に入るまで、ずっと一人で過ごしてきたのだから。
それに、誰もボクに気付かないから、気まずい思いをすることもない。
笑われたりして惨めな気持ちになったりしないし、親切にされて申し訳ない気持ちになることもない。
そう思うようにしている。
初めから誰かと一緒にいなければ、傷つくこともない。
わかっているのに、胸が痛んだ。
ボクは馬鹿だ。
「…黒子?」
まさかと思いながら顔を上げる。
よく見るビニール傘の下に、見間違えようもない紅い頭があった。
「…火神君」
「やっぱりか!何やってんだよそんなとこで」
驚いた顔で、ボクを見下ろしている。
彼はボクを見つけられないのに、何故か、ボクの傍に来てしまう。
そんなことは何度もあったけど、まさか、こんなところにいるボクを見つけるとは。
「…見てのとおりですが」
「雨宿りか?もう完全に濡れてるじゃねえか」
「そうですね」
それに関しては否定のしようもない。
あっさり肯定すると、火神君は、なんだそれ、とでも言いたげに呆れた顔をした。
「家、遠いのか」
「まあ、それなりに」
「じゃあ、家来るか?」
「…はい?」
思わず聞き返してしまった。
彼は本当に何気なくそれを口にしたのに。
「来いよ。濡れたままじゃ風邪ひいちまうだろ」
「…じゃあ、お邪魔します」
横に並ぶと、傘が寄せられるのがわかって、少し申し訳ない気持ちになった。
「あの、ボクはもう濡れてるので気にしないで良いですよ」
「あ?ああ…」
足の長さが違うから、同じテンポで歩いても、どうしても火神君の方が早くなる。
いつもは、早いですと躊躇もせず言う文句を言えずに、時々小走りになりついていく。
やがて、わり、と声が聞こえて、ペースが落ちた。
優しくされると、居心地が悪い。
火神君には悪いけれども、そう思いながら、並んで歩いていると、やがてあれがオレんち、と、彼が指差した。
新しそうなマンションだった。
彼に続いて中に入り、エレベーターで上がって部屋に着く。
許容範囲内で、少し散らかった室内。
家族が暮らすには、少し狭いだろうかという部屋。
靴は、恐らく火神君のであろう大きな、スポーツ用のものしか見えない。
「…火神君、ひょっとして1人暮らしですか」
「おう。ちょっと散らかってるけど気にすんな」
待ってろよ、と言って中へ入っていく。
そしてタオルを持って帰ってきた。
「軽く拭いてシャワーでも浴びろよ。服貸してやる」
「…ありがとうございます」
手際が良い。
しかし、1人暮らしとは予想外だった。
身の回りのこととか、適当にしかこなさそうなのに。
必要に迫られればできるものなのだろうか。
そんなことを思いながら、浴室に向かう。
「洗うもんは洗濯機に入れとけ、回すから」
「はい…すみません」
複雑な気持ちだった。
火神君に世話を焼かれている。
借りてこられた猫になったような気持ち、とでも言えばいいかもしれない。
石鹸類は好きに使って良いといわれ、それに甘えさせてもらった。
冷えた身体に、熱い湯が心地よかった。
浴室から出て、貸してもらったTシャツと半ズボンに着替る。
といってもかなり大きい。
Tシャツは肘を越しそうだったし、ズボンも中途半端な丈。
何より紐をきつく縛らなければすぐにもずれそうだった。
当たり前のことだったが、少し悔しい。
洗濯機が回っていて、火神君は、なんと台所に立っている。
「おう、上がったのか。もう晩飯も食べてくだろ?」
「…火神君が作るんですか?」
「決まってんだろ?まあ見てろって」
不安になる気持ちを堪えて、食卓を囲む椅子に腰掛ける。
TVでも点けてろと言われて、なんとなく、点けた。
どうでもいいバラエティ番組で止めて、それを何気なく眺めながら、火神君を見た。
大きな身体が、慣れた仕草で調理を行っている。
こんな姿を想像したことはなかった。
キッチンはこんな大柄な人が使うのを想定していないようで、火神君は窮屈そうにそこで手を動かしていた。
その姿は似合うとはお世辞にも言えなかったけど、
それでも、その体は当たり前のようにスムーズに動いていた。
きっと、まだまだ知らないことが沢山あるのだろう。
ボクが彼に言えていないことが、いっぱいあるみたいに。
それからほどなくして、料理は出来上がった。
できた料理は、普通に美味しかった。
美味しいですと言うと、まあずっと作ってるからな、と返された。
謙遜しないのが彼らしい。
それを嫌味にも感じさせないのが、彼のいいところでもある。
天気予報ではこのまま夜は雨が降り続くらしく、火神君は何気なく泊まっていけよと言った。
すごく自然だったので、彼にとっては当たり前のことなのだろうと判断し、家に電話をした。
明日朝家に寄って、準備をしなおして学校に行けばいい。
動くのがもうひどく面倒だった。
眠たい。
ただでさえ練習で疲れているのだ。
特にすることもなくて、だらだらと過ごす火神君の傍で、本を読む。
やがてすることもなくなって、寝るか、と火神君が言って、ボクはそれに同意した。
当たり前のように火神君はベッドで、ボクが布団を敷いた床で。
こういうところに配慮がないのも、彼らしいと思った。
「今日は、ありがとうございました」
明かりを消して、布団にもぐりこんで、思い出したように呟いた。
「あ?…そりゃ、お前に身体壊されちゃ練習できねーし」
「そんなに身体弱くないです」
「全然信用できねー」
そう言われるのはわかっている。
けれど、認めたくないのだ。
だから、いつも僕は虚勢ばかり。
「…でも、火神君がボクを見つけてくれたのには驚きました」
誰も見つけられるわけがないと思っていた。
これは、ミスディレクションに自信があるとか、そういうことではなくて。
ボクはずっと誰にも気付かれない存在だと思っていた。
自己主張をやめれば、皆に忘れられ消えていくのだと。
世界すべてに置き去りにされていく。
「…あー…そうだな、よく気付いたなオレ」
「そうですよ」
間髪入れずに返してから、この話はよせばよかったと思った。
こんなこと、誰も知る必要がない。
ボクの心のありようなんて、どうあろうが意味がない。
眼を閉じる。
忘れようとしている胸の空白が、虚しい悲鳴をあげる。
「でも見つけられなきゃ困るだろ」
「…じゃあ、ボクが迷子になったら、火神くんが見つけてくれますか」
どうしてか言葉が止まらない。
「…お前、影薄い上に方向音痴なのか?」
「いえ、そうでもないですけど」
「…」
不自然な沈黙。
どんな顔をしているのかは、容易に想像がついた。
「今余計なこと考えてません?」
「いや、別に」
どれだけ信用がないのだろう。
流石に最低限の地理感覚はある。
それでなくても影が薄いのだ、はぐれることなど度々で、そしたら一人で帰らなくてはいけないのだから。
必要に迫られれば誰だってそれぐらいのことはできるようになる。
「それで?」
「ん?」
「それで、どうなんですか」
カーテンから街の光が透けて、輪郭だけが見えるベッドを、見据えた。
火神くんの顔が見たかった。
でも、見えなくて良かったと思った。
見えたら、立ち直れないかもしれなかったから。
期待なんて、持ってはいけないのだ。
持たなければ楽だ。
持たなければ何も感じず生きていける。
何を、今更。
自分でもわかっているけれど。
「…そりゃ、見つけなくちゃなんねーだろ。お前、俺の影になるって言ったんだもんな。見つけるさ」
本当に?
「…信じて良いんですね?」
「信じろよ。…信じられないのか?」
「…いえ。信じてます」
信じてます。
願ってます。
そうであって欲しいと。
そうであってください。
ボクにはそう信じることしかできない。
キミがそう言ってくれたことが何よりも嬉しい。
信じさせてください。
いつだってボクを見つけて。
キミの隣に、ボクをいさせて。
「火神くん。…そっちに行ってもいいですか」
「…は?」
返事は待たずに強行する。
妙な自信がわいていた。
「ちょ、待てよ!せめーだろうが!」
「大丈夫です。ボク寝相良いんで」
「そういう問題じゃねーよ!!」
「騒がないで下さい。近所迷惑ですよ」
「…!!」
黙り込んだ彼の横に勝手に横になる。
押しのけられるかもと思って布団をつかんだが、抵抗はあっさり止んだ。
「…はぁ。仕方ねーな」
嬉しい。
笑みがこぼれる。
見えなくてよかった。
「はい。我慢してください」
眼を閉じて、身体を伸ばす。
安心する。
火神君の身体に合わせたベッドは無駄に広く、2人で寝てもそれほど窮屈ではなかった。
もうそのまま寝るものと思っていたが、暫くして、火神くんが口を開いた。
「…お前さ」
「…はい」
「気付いてもらえなくて悲しいとか、思うことあるのか」
「……」
それを聞いて、どうするのか。
何度も。
何度も思っている。
でもそれに気付いたら折れてしまう。
仕方ないと割り切って、利点だけを見つめて。
それで誤魔化す。
自分はラッキーだと思い込もうとしている。
それでも。
拭えない、一瞬。
「…ほんの、たまに」
漏れた本音。
暗くて、ボクの顔が見えないとわかっているからこそ言える言葉。
ほんの、気の迷い。
暫くして、腕が伸びて、引き寄せられた。
逞しく、熱い体。
こんなに違う。
不意に泣きだしたくなった。
だからこそ、必要なのかもしれない。
ボクには、彼が。
そして、逆も、そうであったらいいのに。
もし、彼がボクを本当に必要してくれるなら。
それ以上嬉しいことはないのに。
そんなことを望んではいけないと、ボクのどこかが告げている。
仕方ない。
仕方のないことだ。
「…おやすみなさい」
「…おやすみ」
ボクの、光。
どうか、今だけはボクを離さないでください。
どうか、今だけは。
ボクのものでいて。
このころは時間に余裕がありすぎてたからなんか内容がしっかりしてますね。
そして、ちゃんと言葉づかいとかも考えてあるという…
黒子では、とりあえず1人称に漢字が使われてないんですよね…(女子除く)
皆オレかボク。
後よく見たら火神はお前をオマエって言ってた…。
今更前の直すの面倒なんですけど…
なんだろう、火黒のときだけちょっと気を付けるかもしれません。
後、あれです。
黒子の言葉遣い。
本を読む子だから、私的にはきちんとした日本語を使ってると仮定して書いてるんですが、漫画ではてゆーかとか、結構砕けた物言いもするんですよね。
まあ、その辺は漫画だしスペースの関係とかもあると思うので、実際どうなのかは知りませんが。
まあでもうちでは黒子には綺麗な日本語を使ってもらう予定で行きます。
カタカナ語ってあんまり好きじゃないんだよー。
しかしコミックス読み返してみると、初期と今ではだいぶ絵柄が変わりましたね。
すごく書き込みが細かくなった。
格好いいところは格好いいので、どっちでもオッケーでよかったです。
嫌いな方向に進化されちゃうと悲しくなるので…
それではまた。
拍手してくれてる方、どうもありがとうございます、幸せです。