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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
抱き寄せた腕の中には誰もいなかった。
その瞬間全てを理解した。
夢
「テツ!」
「…青峰君?」
「いつまで寝てんだよ。おら部活行くぞ」
机に突っ伏していて頭を、くしゃくしゃと撫でて、青峰は笑う。
黒子はそれを呆けて見つめていた。
ほらと急かされて、配布物を鞄にしまうと、立ち上がった。
そして青峰の後を追って歩き出す。
ただ楽しそうな、彼を。
練習でも、周りなど全く目に入らなくて。
まるで、世界に2人しかいないようだった。
そう、このころは、いつも、そうだった。
パスが綺麗に通り、心地よくて、嬉しくて、例えようもなく幸せで。
全てが夢のような日々だった。
「やっぱテツはサイコーだな!」
笑って拳をぶつけ合い、肩を引き寄せられる。
重くて、暑いが、悪くない。
黒子は、その触れ合いが好きだった。
何にも、変えようがないくらい。
「明日も、よろしく頼むぜ」
練習が終わって。
帰りながら、楽しそうに告げられる。
「はい」
「オマエパスの精度最近さらに上がってるよな。やべーよ」
「キミこそ、どんどん技術上がってるじゃないですか」
「どうする、誰もオレ達に適わなくなったら」
「慢心は、隙を生みますよ」
「あーうっせーなー。素直に喜んだらどうだよ」
「さあ、どうでしょうね」
敢えて嫌味な言い方をして。
それでも青峰が笑っているのが嬉しかった。
すっと頭が寄せられて、額に、口付けを落とされる。
その瞬間、黒子は、気付いた。
これが、夢であるということに。
あまりにも都合のいい現実。
わかっているのに。
幾度も思い出しては、進めない。
立ち止まり、動けなくなる。
全てが、凍りついて。
突然立ち止まった黒子を、青峰は訝しんで、顔を覗き込んできた。
黒子は驚いて身を引く。
「…どうしたんだ?テツ、らしくねーぞ」
「……いえ…なんでも、ありません」
「…なんでもなくねーだろーが」
「いえ。本当に、なんでもないんです」
そう言いながらも、距離を詰めてくる青峰から逆に距離を置こうとする。
それが不審で、結局、それは許されなかった。
手首を拘束されて、壁際に追いつめられる。
それでも黒子は青峰を見ることすらできなかった。
「テツ」
「……離してください」
「…こっち見ろよ」
「……」
「…こっち見たら、離してやる」
黒子は迷いながら、視線を上げた。
思いがけず優しい瞳に出会って、息が詰まる。
「…オレ、何かしたか」
「……してないです」
「…なら、なんで逃げようとするんだよ」
「逃げようとなんて、してません」
「してるだろ」
ぐっと、顔を近づけられる。
それが怖いのではなくて。
別の理由で、黒子は逃れようと身をよじる。
けれど、止められる。
ぐっと引き寄せ、口付けられ。
青峰は、それで安心させるつもりだったのだろうが、黒子は、頬に、涙を伝わせた。
「っちょ…おい、なんで泣くんだよ」
「…何でもないです」
「何でもなくねーだろ」
「何でもないんです」
「…テツ」
「いいから、ほっといてください」
「ほっとけるか」
「いいんです。本当に」
「よくねーだろ」
抱き寄せようとする青峰の腕に、抗う。
「いいんです」
「よくねーって!」
「…どうせ、キミは遠くに行ってしまうんですから!」
絞り出すように、あげられた言葉。
「…何言ってんだ」
「そうなんです。だって、そうだから」
「意味わかんねーよ」
「わかんなくてもそうなんだから仕方ないです」
「…どこにも行かねーよ」
「嘘つき!」
「どこにも行かねーって」
強く、強く抱き寄せられた。
抗うけれど、敵うはずもない。
ただ、泣く。
彼の腕の中で。
「泣くなよ…」
「……今にキミにも、わかります」
「…赤司みてーなこと言うんだな」
「……」
「…オレのこと、嫌いか」
「!!」
少し腕が緩んで。
真摯な、真っ直ぐな瞳が、黒子を見据える。
眼を逸らすことも、逃れることも、できないと思うほど。
「……そんな、わけない、です」
夢ですらも、そんなこと言えるわけがない。
「…なら、逃げんなよ」
「……だって」
「…好きだ」
だってキミはいなくなってしまうのに。
もうどこにもいないのに。
頭ではわかっているのに身体はどうしようもなく、動かなかった。
余りにもリアルだ。
なんて、惨い。
感触も温もりも全てすべて本物のようなのに。
声も。
何もかも。
夢の中でだけ優しいだなんて、そんなの、反則だ。
「いー加減泣きやめよ…」
「……すみません」
「謝ることねーけどさ…」
「…今日は随分、優しいんですね?」
「…オマエがおかしいからだろ」
「おかしい、ですか」
「…何かあったなら、言えよ。聞いてやる」
「……何も、ないです」
「…そーかぁ?」
「ええ」
これが現実だったらいいのに。
眼を閉じて、顔を寄せる。
暖かい。
優しい。
泣きたくなる。
愛しい。
好きだ。
これは夢なのに。
痛いぐらいわかっているのに。
どうしても、目を覚ましたくなかった。
2人とも、同じ夢を見てるんですね。
黒子は夢の中で、夢だと気付いたけど、青峰は、結局気付かなかった。
そんなところでもすれ違っている。
青峰も目覚めて、自分の言ったことがどんなに愚かだったか気付いたんだと思います。
黒子が夢だと気付いていたことも。
でも元には戻れないという。
つらいですね…。
で、これが15000の第2候補?になります。
甘いのに切ないというのが目標だったのですが、なんか切ないだけになっちゃったよ…。
のでリクには適さないかなぁと判断。
どっちもどっちな出来になってしまったんですけどね!
いま読み返したらこっちの方がいいのかなぁという気持ち。
ぐめろむさん、お気に召しましたら、両方もどうぞ。
勿論両方気に食わなかったら書き直しますので。
どちらも素敵です!前回はかっこいい黄瀬を書いていただきましたが、やっぱりへたれた黄瀬も好きだと実感しました笑。
青黒も切ない!目覚めた後、現実で会った二人の反応がみたいと思ってしまいました。
感想が遅くなってしまってすみませんでした!本当にありがとうございました。またキリ番目指します!