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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
最近黒子がおはあさのラッキーアイテムを身に着けるようになった。
最初はあれだけ頑固な男がなぜ、とも思ったが、
それはむしろ歓迎すべきことだったので、問い詰めたりはしなかった。
あの占いの効果の確実性を思い知ったのだろうと思うことにして。
そもそも、試合に出るメンバー全員が運に恵まれるのが望ましいのであり、それを考えれば、
一向にアイテムを持とうとしない他のメンバーをとっとと改宗させるべきなのかもしれなかった。
しかし他の奴らは皆自己主張が激しい上に自分の理屈は絶対に曲げない偏屈ぞろいだったので、
結局それは諦めるしかなかったのだが。
その中でも自己主張はしないものの、頑固さでは群を抜いている黒子がそうしたのは本当に驚きだった。
しかしあの占いは確実さをあげるためなのか、少々持ち運びに困るものや、
中々人が持っていないであろうものもラッキーアイテムとして挙げる。
その為まだその道に足を踏み込んだばかりの黒子では集められないものも多々あるようだった。
そういうことならと、うちにあるものをいくつか貸してやることにした。
元々自分の占いは必ず見るのだから、黒子のをついでに調べることなど何でもない。
ぬいぐるみ、置物系は無いようなので、基本持って行ってやる。
今日は、鳥のマスコットだった。
「黒子」
朝練のついでに、渡すようにしている。
この時、昨日のものがあれば、黒子が返すパターンだ。
昨日は白いハンカチだったので、黒子からは何も返ってこない。
「ありがとうございます。…また、随分と可愛いですね」
「お前が持つならそう問題はなかろう」
性質的にも、体格的にも。
そう言うと、複雑そうな顔でこちらを見上げた。
相手にせずに着替えに移る。
ぶすっとした顔ばかりしているのに、可愛らしい小物が存外似合うのが面白い。
そういう意味では、この手間も中々悪くなかった。
それに対する周囲の反応も様々だった。
「テツ、お前何持ってんだよ…」
「青峰君」
「こりゃ緑間のか?なんでお前まで占いなんざ信じてるんだ」
「ちょっと、本気で試してみたいことがあるので」
「はー、頼むからお前は試合前にやたらと変なモン押し付けたりしてくんなよ…」
「黒子っち、なんで急に緑間っちの言うこと聞く気になったんスか?」
「別に、大したことじゃありません。ただ、人事を尽くしてみるということがどういうことなのか試してるんです」
「う~なんか黒子っちが緑間っちに汚染されたみたいで嫌ッス…」
「人を勝手に汚物に例えるな」
「あれー黒ちんなにそれ。可愛くない?」
「…やめてくれませんか」
「あーゴメンゴメーン。でもなんかそれ持ってたら女の子みたいじゃん」
「本気でやめてください。怒りますよ」
「もう怒ってんじゃーん」
「へぇ、テツ君も占い見始めたんだー」
「はい」
「そっか、じゃあ私もそういうの見ようかなー。最近女子の間でも流行ってるんだよ」
「そうなんですか」
「うん!今度一緒に相性占いとかしよーよ!」
「あー、まあいいんじゃないのか、信じる者は救われるっていうしな。
ただし、運勢が悪いからできないとか言うな。それだけだ。」
まあそれぞれらしいと言えばらしい反応だった。
そんな日々が一か月ほど続いただろうか。
自己練を終えて、部室に戻ると、黒子が、ビデオを見ていた。
他県のものだろう、見慣れないユニフォームが動き回っている。
近寄り、帰らないのかと声をかける。
黒子は振り向いて、それから時計を見て、もうこんなに経っていたんですか、と呟いた。
そして、帰り支度に入る。
流れでそのまま一緒に帰ることになり、少し夕闇が迫る視界の中を、2人行く。
「あまり、根を詰めるなよ」
そう言うと、黒子は少し驚いたような顔をして、それから笑った。
「キミに言われるとは思いませんでした」
「…オレは、自分の限界を知っているのだよ」
「…ボクは、それを知らないで無茶してるってことですか」
「そういうことになるな。せめて、自分の体調管理ぐらいはしっかりしろ。危なっかしくて、見ていられないのだよ」
「…そんなに、ボクのこと見てるんですか?」
コイツは何を言っているのかと思って傍らを見れば、黒子は何かを窺うようにこちらを見上げていた。
この視線は苦手だ。
何もかも、探られているような気になる。
「しょっちゅう倒れてもいれば、気になるようになる」
「…そうですよね。いつもご迷惑おかけしてます」
「何を拗ねているのだ」
「拗ねてなんかいません」
素直に自分の非を認めることなど滅多にないというのに、どうしたというのか。
「…緑間君。ボクが、人事を尽くそうと決めたのって、何故だと思いますか?」
「…試合に勝つためではないのか?」
何を今更。
「勿論それもあります。…でも、本当はもう一つあります」
「…何だ?」
「…何だと思います?」
意味不明な質問だ。
いきなりこんなことを問われて答えられる人間などいないだろう。
「…何なのだよ」
「やっぱり、わからないですよね」
「…馬鹿にしているのか」
「いいえ。その手のことは前から鈍そうだなとは思ってましたから」
なんだ、この失礼な物言いは。
「おい、」
「いつも、キミが人事を尽くせと言ってるので」
黒子は突然立ち止まる。
「人事を尽くしたらボクの願いが本当に叶うのかと試してみようと思ったんです」
「…だから、それがなんなのか、」
「好きです」
「…!?」
今、コイツは何を言った!?
「ボクは緑間君が好きです。
…なので、人事を尽くしたら緑間君もボクを好きになってくれるかどうか、試してみました」
「…っ!!」
よくも、億尾もなくそんなことを。
「それじゃあ、お疲れ様でした。…別に、無理してくれなくてもいいので。現状で僕は満足ですから」
そんなことを言い残して、黒子はさっさといなくなってしまった。
言い逃げか、卑怯者!
こんなに唐突にしかもあんなことまで言い添えて、こっちに何を望むというのか。
嫌ではないどころか、頭に血が上り、真っ白になる。
オレだとて、オマエに何も感じていないとでも思ったか。
気のせいだと、気の迷いだと、言い聞かせてきたというのに。
…男に落とされてしまうなど、正気ではない。
そう思うのに。
どうしようもなく惹かれている自分を、自覚せざるを得なかった。
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