そこから流れる血を、目の前の大男が舐めとった。
黒子はぞくりと身を震わせ、赤色を移した、彼の舌を見る。
熱のこもった視線が、自分に向けられている。

食べられてしまう。

不意に、そう思った。


衛生的に、よくないんですよ、こういうの。
いいよ、別に。オレ体丈夫だから、大変になるの黒ちんだと思うし。
…最低ですね。

オレのせいで痛い目にあえばいいよ。
…嫌いになっていいですか？
それはやだけどさー。オレのこと、もっと考えてほしー。
…考えてますよ。
そっかな。ホントに？
考えてます。キミが思ってるよりは、ずっと真剣に。
黒ちんはさ、いらないこといっぱい考えてそうだから。
…どういうことですか？
もっと単純にさ。オレのことしか考えないで。

……無理です。
ほら、そーやって逃げようとする。
逃げてません。
なんでわかんないの？
ボクにはキミが理解不能ですよ。

ねぇ。オレのことだけ好きになって。オレのことだけ見てて。
…。
オレのせいで、死ねばいいよ。
…お断りします。

…あーあ。オレがなんか病気持ってたらよかったのに。
？
そしたら、ホントにオレのせいで死んじゃうでしょ？
…そこまで強い病気なら、もれなくキミも死にますね。
あは。それもいーね。一緒に死ねばいいじゃんね。

…馬鹿なこと、考えないでくださいね。
そだね。ま、痛いのは嫌だし。
人生は長いんですから。きっとこの先、もっと面白い人と出会いますよ。その時まで早まったことはしちゃ駄目です。
ホントに？
？

ホントにさ。もっと面白い奴がいると思う？

……。

退屈して死んじゃうぐらいなら、面白く死んじゃえばいーと思わない？
……極論ですね。
そーかな。
そうですよ。

ねぇ黒ちん。死にたくなったらいつでも言いなよ。
…そうなる予定はありません。
オレが殺したげる。

…頼むとしても、キミには、頼まないです。
えー。
えーじゃないですよ。

じゃあ誰？峰ちん？赤ちん？
前提からありえないので、考えてません。
だからちゃんと考えてって言ってるのにー。
考える必要の無いことは、考えません。

ちょっとは人の話聞きなよねー。
キミこそ。もう少しまともな思考ができないんですか？





最後は茶化すようにして。


真剣に考えては、いけない。


誤魔化し続けなければ。






いつか彼に殺される日が。


本当に、来てしまいそうな気がした。