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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
黒子は、雨の中を、息を切らして、小走りに、行く。
傘はない。
弱まる様子のない雨の中を、諦めて、真っ直ぐに家に帰る。
その姿を黄瀬は見かけて、思わず叫んだ。
「…黒子っち!?」
「…黄瀬、君」
止まった姿に駆け寄って、傘を傾ける。
傘もなしに行くような雨じゃない。
行きかう人は皆傘を差しているのに、どうして。
「びしょ濡れじゃないッスか。どしたの?」
「…傘、盗られて」
「うわー、そーゆー人いるッスよね。最悪。大丈夫?」
「はい」
「タオル、これ、使ってないから使って」
「いえ、申し訳ないので」
「でもそのままじゃ風邪ひいちゃうでしょ。使って」
「…どうも」
黒子は、受け取ると、ぱふ、と顔をタオルに埋めた。
目と口に水滴が入ってくるのが、一番鬱陶しい。
「家まで、送るッス」
「…こんなのと傘一緒に入ったら、キミも、濡れちゃいますよ」
「こんなのとか言わない。大丈夫ッスよ、どうせ、もう家帰るだけだし」
「けど、」
「ここで濡れてる黒子っちほっといて帰る方が嫌ッス。すぐだし、オレ、身体丈夫なんで」
「…すみません」
笑う黄瀬に、黒子は、少し申し訳なさそうに俯いた。
「…ホント、びしょびしょ。髪から、滴垂れてる」
黄瀬は、黒子の手からタオルを取って、髪を撫でる。
手つきは優しい。
「…キミが女の子にもてるのは、外見だけが理由じゃないんですよね」
「えっなんスか、いきなり」
「いえ、なんでも」
「いや、嬉しいけど」
「そうですか」
ある程度タオルで拭ってしまって、それから、黄瀬は先導するように歩き出した。
黒子も、すぐその横に並ぶ。
跳ねる水の中を、2人、歩いていく。
「でも、傘盗られたなら、他にあったの借りちゃえばよかったのに」
「それだと、同じことしてるじゃないですか」
「黒子っちは真面目ッスね」
「当たり前ですよ」
「そっか」
「はい」
「まーオレも他人の傘は使いたくないけどね。それぐらいなら、新しく買うかな」
「キミがお金持ちだから言えることですよ?」
「黒子っち貧乏なんスか?」
「貧乏って言い方どうかと思いますけど。コンビニの傘、高いじゃないですか」
「まあ、確かに。素材はヘロヘロなのにね」
「今度、またどこかで買いますよ」
「変わった傘使ってると、中々盗られないんスけどね」
見てすぐに、誰かのだってわかるようなやつ。
黄瀬は、笑って言う。
「…変なのは、イヤですね」
自分の趣味に合わないものは、なるべく持ち歩きたくなかった。
「後は名前書くとか?」
「名前、ですか」
「ちょっとカッコ悪いけどね」
「じゃあ、それで」
「なんか、小学生みたいで可愛いッスね!」
「ちょっとしか、違いませんけどね」
「でも、違うでしょ?」
この年頃の年齢差は、精神的にも、肉体的にも大きな差がある。
まあ、黄瀬らキセキは、小学生の時から中々恵まれた体格ではあるのだが。
でも、それだけではない。
「…そうですね。キミは随分、大人っぽいですし」
「今の、青峰っちとかに聞かれたら絶対笑われるよ」
「ふふ。キミは、TPOをよくわきまえてるんですよ。そこら辺、凄く、大人ですね」
「そう?でも、黒子っちに褒めてもらえると嬉しいッス!」
「…そこらへんは、可愛いと、言っておきましょうか」
「…黒子っちが好きって言ってくれるなら、何でもいいんだけどね」
「さあ、どうでしょうか」
黄瀬の軽い言葉を、黒子は軽く受け流した。
黄瀬は、少し残念そうな顔をする。
もっと、真に受けてほしいのに。
女の子だったらたとえ憎まれ口をたたいたって、まんざらでもなさそうな顔をしてくれるものなのに。
目の前の相手は、なんら変わらない、ポーカーフェイスだ。
「…手強いッスね」
「簡単に靡くような相手だったら、キミの周りに、いくらでもいるでしょう?」
「でもオレは、黒子っちだけだから。相合傘出来て、幸せだよ」
「ホントに、口が上手い」
「本気なのに」
「軽々と言えちゃうところが、ダメなんじゃないですかね」
黒子はさらりと言ってのける。
黄瀬は残念、とばかりに肩を竦めた。
黒子の家まではまだもう暫くある。
黄瀬がまた新しく放るであろう話題で、会話は、続いていくだろう。
2人の距離感は、まだ、そう簡単には縮まりそうにない。