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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
(キリ番18000をとってくださった、サドエボさんに捧げます。面白い青黒)
「テツ。オイそれ見せろよ」
部室に新しく入ったバスケ雑誌を読んでいると、そう、声がかかった。
顔を上げなくてもわかる。
自分をこう呼ぶ人は、1人しかいない。
「嫌です」
「おい!」
「ボクが呼んでるので後にしてください」
「んだよ、そんなにおもしれーことでも書いてんのか?」
「ちょっと…引っ張らないで」
馴れ馴れしく隣に座って、顔を寄せてくる。
それで腕を引っ張るので鬱陶しくて、黒子は肘鉄を食らわせようとするが、どうやら予想の範囲内だったようで、片手で受け止められてしまった。
「っは、いつもくらってたまるかよ」
「……」
「読みにくいんならこーすりゃいーだろ。オマエちーさいんだから」
「ちょっ…!!」
黒子は引っ張り上げられて、青峰の足の間に座らされる形になる。
確かにこの形なら黒子が無理に本を傾けなくても青峰にもそれが見えるだろう。
けれど体制がどうも釈然としなくて、黒子は顔を歪める。
ただそれは位置的に青峰には見えなかった。
青峰は調子に乗って黒子の胴に手を回して、肩に頭を乗せる。
「…くっつきすぎじゃないですか?」
「いーから。とっとと読めって。邪魔しねーから」
「ホントですかね…」
黒子は疑ったが、結局それはその通りになった。
黒子が頁をめくるたびに待て早いだの、かと思えばここ面白くねーだの言って次を急かす。
なんて迷惑な。
黒子はそう思いながらも大人しくページをめくっていった。
「あーオレもレーンアップしてーな」
「はぁ」
「んだよ興味なさそーだな」
「だってちょっと無理じゃないですか。身長足りないでしょう」
「うっせーな!!オメーに言われなくねーよ!!」
「わっ!!」
ぐしゃぐしゃと押しつぶすように頭を撫で、押さえつける。
「やめてください!!縮むじゃないですか!!」
「それ以上縮むわけねーだろ」
「それ以上ってなんですか!もともと縮んでないです!!」
「つーかオマエがこんなの読んでも意味ねーだろプレイできねーんだから」
「だったらキミだってレーンアップの記事なんか見るべきじゃないですね!!」
「んだとぉ!?」
「大体この間も緑間君にダンクばっかしてて猿かって言われてたじゃないですか!」
「うるせーな!いーんだよダンク好きなんだから!!つーかオマエもオレのダンク好きだって言ったじゃねーか前!!」
「それとこれとは話が別です!!」
「違わねーよ!!」
白熱して立ち上がって論戦を繰り広げていた2人だが、青峰が黒子の腕を掴んでぐっと引き寄せた。
そんなに近づかなくてもいいだろうと言うところまで顔を近づけて、青峰は言う。
「オレがダンク決めんのが嬉しくねーとでも言うのかよ?」
痛い所をつかれた。
黒子は思わず息をのんでしまう。
その瞬間負けた、と思った。
こういうやり取りは先に黙ってしまった方が負ける。
だってそうだ。
ボクがそれを喜ばないなんてそんなことありえないのに。
「………」
「おい」
「…嬉しいですよ。ちょっと腹が立っただけです」
離れたいのに離してもらえなくて、近くでそんなことを言わされて悔しくて、黒子は眉を一層寄せた。
青峰は少しあっけにとられたが、笑う。
珍しく素直じゃないか。
「おーいこっち向けよ」
「嫌です。離してください」
ぐぐぐ、と力比べのような事態になっている。
「ほらオレが好きだって言えよ?」
「なんでそうなるんですか?」
「オレのプレイが好きってことはオレも好きだってことだろ?」
「そんな強引な理屈成り立つと思ってるんですか」
「素直になれよこら」
「嫌です」
いい加減離してくれと、腕を何とか振り払って、距離を取る。
「強く握りすぎです。痕、残ってるじゃないですか」
握られた腕に、指の後が赤く残る。
「オマエがヤワなんだよ」
「キミが乱暴すぎるんです」
そんなやり取りをしていれば、扉が開いた。
もうそんな時間か。
そして続々と部員たちが入ってくる。
黄瀬も、その一人だった。
青峰と黒子が向かい合って話しているのを見て、自分も混ぜてくれと言わんばかりに歩み寄って来た。
「こんちはッス。どうしたんスか、なんか騒いでるの外まで聞こえてたッスよ」
「これ、一緒に見てたんですよ」
「あ、これ最新刊入ったんスね。見ていい?」
「どうぞ」
「おいなんで黄瀬にはそんな素直に渡すんだよ」
「だって読み終わりましたから」
今渡すのはもう満足したからで、事情が違う。
しかしせっかく引き離したのに、また青峰は後ろから纏わりついてきた。
まあ納得いかない気持ちもわからないではないが。
黒子はもういちいち止めるのも面倒で、されるがままにしておいた。
「いいなー。オレも、もっと基礎練して、こんなのできるようになりたいッス」
「頑張ってください」
「オイ。マジオレの時と態度ちがうじゃねーか」
「黄瀬君は元々コピーが得意ですしキミとは違いますよ」
「え?何青峰っち嫉妬ッスか?」
「テメーは黙ってろ!」
「いったっ!!」
べし、と黄瀬を叩く。
「青峰君、黄瀬君にあたらないでくださいよ」
別に何もしていないのに可哀相だと、黒子は青峰を窘める。
「うるせーオマエのせいだろ!!」
「っちょ、喧嘩しないで!!」
本当は、お互いにわかっている。
未知なるバスケを知りたいという渇望も、もっと自分を高めたいという欲望も。
そして互いを信頼して、好きあっているということも。
ただ、それは。
口に出すにはあまりにも純粋な思い過ぎて。
上手く伝えられないまま。
「あ、もう時間ですよ。急がないと」
「っくそ、上手いこと逃げやがって」
「逃げてはいませんよ」
「オレのことも素直に応援しろっての!」
時間は流れていく。