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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
日が落ちて薄闇に包まれた校内には、人気がすっかりない。
その中を、整理運動がてら、高尾が歩いていく。
季節が秋に近づいて、夜の訪れが早くなった。
それに比例して、通常の部活は活動時間を短縮している。
まだやり続けているのはバスケ部ぐらいなものだった。
尤も、バスケ部も一応の練習は終わって、今は自主練の段階だ。
先生も生徒もいない学校は、どこか薄気味悪く、けれど、好奇心を誘う。
そこで、あるはずのないものを見つけてしまって、高尾は立ち止まった。
意識せざるを得ない、すっかり強敵として認識された水色の頭。
ここのものではない、変わった意匠の学ラン。
「…こんにちは」
「…なんでいんの?」
当然のように平静な態度には今更触れる気にならない。
「緑間君に用事がありまして」
「そっちの部活は?」
「今日は休みだったんです」
「へー…」
詳しく聞く必要は別になかった。
学校ごとに会議やら講演会やら工事点検テストだなんだと、色々あるものだったし。
別に黒子が体調悪いから帰されたのであっても、関係はなかったから。
尤も、当の黒子はそれほど体調が悪いようにも見えなかったが。
「ってか、不法侵入じゃん」
「誰もいなかったので止むをえませんでした」
「外で待ってりゃよかったのに」
「待ちくたびれました」
「あー、まぁね」
ここまで待っていたのなら相当だ。
「緑間に連絡してたの?」
「してないです」
「…そりゃー用意が悪いんじゃない?」
「突然思い立ったので」
ダメだこりゃ。
こっちの常識は通用しそうにない。
「まいっか。来いよ。体育館まで連れてってやる」
「いいんですか?」
「下手にウロウロされてすれ違ってもあれでしょ。見つけちゃったし」
「どうも」
「じゃーこっちね」
先導して、さっさと歩き出す。
どうせあいつはまだシュートを打ち続けてるだろう。
一切の手抜きも許さない、かゆくなりそうな生真面目さで。
「で?用事ってなんなの」
「…本を、返しに来たんです」
「本~?」
っていうか、あいつが貸したのか。
あんまり、そういうことはしそうにないけどな。
まあ、同中の奴らは、トクベツってやつなんだろうけど。
「はい。ずっと、返すのを忘れてたんです」
随分と遠い目をして語るから。
追及はしないままそのまま歩いた。
体育館の前で先輩たちとすれ違って、それに完璧に黒子が気付かれないのに驚きを通り越してあきれて。
中に入ると、高いループのシュートが放たれた瞬間だった。
もう、外れることを微塵も疑わない。
ゴールにボールが吸い込まれるのを見届けて、真ちゃんがこっちを向いた。
手をあげて、応える。
「お疲れ~。なんか黒子ちゃん来てたよ」
「!?」
訳が分からないという顔をした。
当然だよなぁ。
どっちも変な奴だけど、黒子は、ホントに予測もつかないようなことしでかすんだから。
「お久しぶりです」
「…何の用だ」
戸惑って凄く嫌そうな顔をしている真ちゃんに、黒子が、鞄の中から何か取り出した。
本だ。
オレはもう知ってたし、そのままだからすぐわかる。
「ずっと返しそびれてました」
「…今更、持ってくる意味が分からんが」
「あの時は、色んなことで手が一杯だったんです。気が付いたら、本棚のこやしになってました」
黒子は本に目を落として喋る。
中学の時から、ずっと貸しっぱなしだったってことか。
相当だ。
忘れても仕方ないし、もう時効なような気もする。
大体文庫本なんてそんなたいそうな値段はしない。
「…オレも、オマエに貸したことなど忘れていたのだよ」
「そうですよね。じゃなきゃ、怒られてたでしょう」
「なら、何故返しに来た」
不機嫌な態度を、さらけ出して、酷く威圧的に。
一見、苛めてるみたいにも見えるのに、黒子は決して負けてはいない。
「……前に、進みたくて」
「…?」
「…あの時のことを考えるのを、ボクは、ずっと避けてました。でも、それだとただ逃げてるだけだと思ったので。
それで、そうしたら、本を借りていたことに、気が付いたんです」
全中後に姿を消したって、あれか。
本当に、生真面目な奴ら。
なんで、適当に生きるってことができないんだろう。
「…過去と、決別する覚悟ができたということか」
声は、硬い。
だって、斬り捨てられる側なんだもんな。
ちょっと可哀想になって、酷いもんだなぁと思う。
なんだかんだで、いつも気にしてるのに。
当の本人は何にも気づいていないのか。
「…決別、ではないです」
「では、なんだ」
「ここから、新しく始めるんです。もう一度、やり直したい。一方的な別れではなく、改めて、わかりあっていくために」
言葉は、あまりにもまっすぐで。
プロポーズか何かみたいだと言ったら、言い過ぎだろうか。
真ちゃんは暫く黒子を見ていたけど、突然壁に向かって歩き出した。
隅に置いてあったタオルで汗を拭いて、何か持って、黒子のところに戻ってく。
ああ、あれは、今日のラッキーアイテムか。
おは朝のやつにしてはまともなやつ。
だって、信楽焼とか持ち歩くモンじゃねーし。
黒子の本を奪って、それを押し付けた。
黒子が返しに来たやつとよく似た、文庫本。
「…何ですか」
「貸してやるのだよ」
「…。緑間君って、結構、情緒がありますよね」
「余計なことを言うな」
新しい関係を始めるってことか。
貸しっぱなしの本が返されることで古い関係が破棄されるなら。
新しい本を貸すことは、そういうことになるだろう。
真ちゃんはそういう時いつもするみたいに眼を逸らしてて。
黒子は、少し嬉しそうにしてる。
なんだこいつら。
見てて恥ずかしくなってくる。
「おーい真ちゃん、もう片付けしよーぜ!もう練習する気もそがれたろ!」
声をかけて、近くに転がってきてたボールを拾いにかかる。
真ちゃんがちょっと鬱陶しそうな顔をしたのが、笑いを誘った。
新しい関係を作るなら、オレの入る隙間も、ちょっとは作ってくれないとな。
ツンデレがそういうものなんでしょうけど。
言葉通りに受け取ってたら、自分のこと嫌いなんだろうとしか思わないでしょうしねー。
高尾の説明が少しくどいかなぁ。
なんとなく高尾視点にしちゃったので。
緑間と高尾はツーカーって感じなので、現在の時制で話を書こうとすると外せないんですよね。
もう3人で仲良くしてたらいいよ!って思いますけど(笑)
皆可愛い。
拍手が一気にされてたのが印象的でした!
いつもありがとうございます^^
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