日々の暮らしの中から、幸せな時を見つけて、きちんと拾い上げていく。


そうすれば、そんなに、つらくはないのだと、思った。









今までが多すぎただけで。


今でも、十分すぎるのだ。


だから、大丈夫なのだと。






言い聞かせて、いる。







朝、黄瀬君がボクを見つけて、話しかけてきてくれた。

プラス１。

黄瀬君が朝練には出てきたけど、午後は練習に出られないと言う。

プラマイ０。

青峰君は、やっぱり今日も朝練にいなかった。
でもそれはいつものことだから、加算しない。

これは、不幸なことでもなんでもない。

昼休み、時間が余ってブラブラしていると、珍しく一人の紫原君に出くわした。
その後、暫く言葉を交わした。

プラス１。

緑間君のシュートが、今日も綺麗に決まる。

プラス１。

青峰君が寝過ごしたと言って途中から練習に参加する。
なんだかんだ文句を言いつつも、真面目にメニューをこなした。

プラス２。

紫原君も、ちゃんと練習に参加している。

プラス１。

赤司君が次の試合のスタメンを発表する。
その中にボクは含まれていなかったが、後からお前は第２か第３で使うと告げられる。

プラス１。

青峰君は自主練には参加せず一人で帰っていった。

マイナス、１。

残って練習をしていると、眩暈がして。
今日は帰れと強制的に帰される。

マイナス１。

１人の帰り道は、かつてより遥かに長く、苦しく感じられる。

…マイナス、０．５。






今日は、４．５点。
それなりに好成績。


今日も、ボクは、幸せ。

















段々評価基準が緩くなっているような気がするのは、きっと気のせい。








まだプラスだ。

上向きだ。

だから大丈夫。

マイナスではない。







ボク達はまだ不幸ではないし、これから喜びを迎えることだってできるはずだ。








そうだ。

そのはずだ。

大丈夫だ。

まだやれる。

楽しめる。

これが普通だ。

やっていける。

問題ない。

何もつらくない。

何も悲しくなんてない。

怖くない。

痛くない。

苦しくない。

笑える。

やれる。

バスケが好きだ。

平気だ。




そうだ。


何も恐れることなんてない。


探せばきっとまだ見つけていない幸福なんてきっといくらでもあるはずなんだ。


不幸のどん底に、いるっていうわけでもない。











きっと。



だから。














だからきっと。
















だから、きっと、大丈夫。