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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
青峰が、最近できた彼女を、早々にふった。
それは始まった時から眼に見えていたことだったが。
何もかも投げやりになって。
適当に、ただ暇を潰すためだけに、弄ばれる周囲。
今の彼は、周りを傷つけるだけの凶器でしかない。
そして案の定その結末を迎えた。
それはいいのだ。
自業自得と、言えるのだから。
ふられる方も、ふる方も。
それと知っていてやっている。
けれど、そのふり方が最悪だった。
桃井と共にいるのを問い詰められ、文句を言われて。
それが面倒だからと別れた。
フォローなんてまともにしなかった。
ただ鬱陶しいゴミを払うかのようにあっさりと。
そして、彼女の納まり切らない怒りは、そのまま桃井へと向かうことになったのだった。
人の彼氏を奪う女だとか、青峰を振り回しては遊んでいる悪女だとか。
桃井の傍に居る友人たちまで、そんな仲間だとか、酷い噂が言いふらされるようになった。
彼女はそこそこ人付き合いの多い方だったから、あっという間に噂は広まって、誰しもが遠巻きに、色つきの眼鏡で、桃井を見るようになった。
桃井は自分から一人になるように行動して、被害を最小限になるように努めた。
自分が犠牲になって。
友達が自分を避けることも、仕方ないと受け入れた。
誰だって、自分が一番かわいいのだから。
それに、巻き込みたくなかったから。
悪口だけではなく、机や黒板にも派手な落書きがされて。
直接的な呼び出しはないまでも、突き飛ばされたり、ぶつかられたりと、被害は、拡大するばかりだった。
彼女の表情からはすっかり笑みが消えて、それでも、マネージャーの仕事は淡々とこなしているのが、健気で、哀れだった。
「女って怖いッスよね…」
「どうしたんですか、いきなり」
「いやー…なんか、まあ青峰っちとあの子がそれでいいならいいかなって思ってたけど。でも、こんなことになるとは思ってなかったというか…」
「桃井と青峰が幼馴染だというのは周知の事実だったというのにな。後になって騒ぐのも見苦しい」
「…でも、今回のことは、青峰君が一番悪いんだと思いますよ」
黒子は、冷えた瞳で、そう批判した。
黄瀬は、肩を竦める。
「確かに、それはね。だって青峰っち、真面目に付き合う気なんかなかったもん」
「アイツはバスケ以外に興味を持っていないからな」
「それでも昔ならまだマシな対応をしたでしょうけどね」
「…バスケがつまらなくなってから、青峰っち、すごい変わっちゃったからね…」
「あんな、適当な人じゃなかった筈です」
「まあ、最低限の節度は守る男ではあったな」
「桃っちのことも庇うつもりなんてないッスよね。いや、庇っても、多分余計悪いことになると思うんスけど」
庇えば庇うほど、悪意は募るだろう。
例えそれが黄瀬や緑間であっても。
男なら誰でもいいのかとか、そんな噂がまた広がる。
手出しはできない。
黒子ですらも。
誰かが助けているとわかれば、余計彼女に対する風当たりはきつくなる。
それをわかっているから、誰しも、遠巻きに見守るだけだ。
こんなこと間違っていると皆わかっているのに。
放課後黒子は青峰の元へ押しかけた。
いつもの屋上。
桃井は部活に行ったことを、確認して。
「青峰君」
「……テツか」
「そうです」
「……」
「桃井さんだとでも思いましたか」
「別に、んなこと思ってねーよ」
「彼女は今こんなところに来れませんよ」
「……」
「どうせまた逢引だとか、言われるだけなんですから」
「るっせーな。言いたい奴には言わせとけばいいだろ」
「キミのせいでしょう?」
「…んだよ」
「キミのせいじゃないですか」
「…」
「キミが大切にできるわけもないのに彼女なんて作るからでしょう」
「オレの勝手だろ」
「それで桃井さんがこんなことになってるのに、何もしようとしない」
「アイツがうるせーからこんなことになったんだろーが。最初からほっとけばよかったんだ」
「ほっといたらキミはどんどんダメになるだけでしょう!何も言わないでキミがまともな行動をしてくれるんだったらボクだってそうしてますよ」
「頼んでねーし」
「キミの対応も最悪ですよ。彼女が不安になったのはキミが結局適当だからじゃないですか」
「うるせーんだよ。いちいち色んなことに口出ししてきやがって」
「付き合うってそういうことでしょう。相手のこと思いやらないと上手くいくわけない」
「オマエに何がわかるんだよ」
「キミが桃井さんはただの幼馴染で、好きなのはオマエだけだって慰めてあげればよかっただけのことじゃないですか!」
「…よく、そんなくせーこと言えるな」
「茶化さないでください!!」
「…だって別に、オレ、引き留めたいほど好きじゃなかったしな」
「なら付き合わないでください!」
「オレの勝手だろ。黄瀬だって似たよーなことしてたじゃねーか」
「黄瀬君は彼氏としての義務は最低限果たしてました。キミは全部放棄してます」
「彼氏としての義務ってなんだよ」
「どうして相手のことちゃんと考えてあげられないんですか?真摯に対応できないなら、付き合おうとなんて最初からすべきじゃなかった!」
「オマエに意見されることじゃねーよ」
「それで誰にも迷惑がかかってないならほっときますよ。でも今回は違います」
「…さつきが、迷惑をこうむってるってか」
「そうですよ」
「オマエさつき好きだな。付き合えば?」
「そんなことを言ってるんじゃないんです!」
「うるせーな。いい加減黙れよ」
「嫌です。こんなの、誰も幸せになれない。どうしてそんな風にしかできないんですか」
「黙れ」
「バスケがつまらないからって全部投げ出すことないじゃないですか!!」
「うるせーよ!!黙れっつってんだ!!」
「100歩譲ってバスケには真剣になれなくてもいいです!それでこんなこともうやめてください!!」
「なんでオマエに許されなくちゃなんねーんだよ!!関係ねーだろ!!」
「関係なくないです」
「……チームメイトだってか」
「そうです」
「…やめろよ。鬱陶しい。関係ねーよ。オレさえいれば勝てんだろ?だったら黙ってついてくりゃいーだろ!!いちいち文句言ってんじゃねえ!!」
「極論過ぎます!!まだキミが出会ってない強い選手だっているかもしれないじゃないですか!!」
「全国制覇してもか!!」
「……」
「もう全国にオレより強い奴なんていねーって証明されちまったじゃねーか!!」
「…出れない事情があったかもしれないじゃないですか」
「そんなのがある時点で強いわけねーだろ!!片手間でやっても勝てちまうんだよ!オマエにわかるわけねーだろ!!!」
「それでもこれはないです!!」
「うるせーんだよ!!わからねーなら黙ってじっとしてろ!!オレに構うな!!」
「全部投げ出していいわけないでしょう!!どうしてキミを大切にしてくれる人を大切にできないんですか!?!?」
「頼んでねーだろ!!!大切になんかされなくてもいーんだよ!!オレは一人でやっていけんだよ!!オマエらなんかいなくたってな!!!」
「やっていけるわけないでしょう!!キミは何もわかってない!!」
「オマエだって何にもわかってねーよ!!!」
激しい舌戦。
両者とも肩で息をつくようにして睨み合う。
酷く、疲れた。
わかりあえないことを証明しているかのような主張。
何も通い合わない。
ただ無慈悲にその現実が付きつけられるだけ。
泣きたくなるほどの悲しい現実。
「…少しは、考えてください。キミだって一人では生きていけないんですよ」
「………」
「ボクは、部活に行きます」
返事を待たず、背を向ける。
こんなやり取りがしたいのではないのに。
酷い悲しみだけが横たわる。
本当はわかっている、こんなやり取りに意味はないと。
わかってなどくれないと。
こんなに人生を歪めてしまうほど彼はバスケを愛していたのに。
だからそれ以外に彼を直す方法などなくて。
でも彼を倒せる力なんて今は。
どこにもなかった。
その事実が黒子も青峰も、桃井も、誰も救ってはくれないのだった。