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「…テツヤ」
火神が呼んだ瞬間、黒子の体がびくりと震える。
戸惑う眼差し。
拒絶を表す身体。
「…どうした?」
「……ごめんなさい」
目も合わせることができずに、俯く。
身体はこんなにも近くにあるのに、心は、どこまでも遠い。
「…名前、呼ばないで」
泣くようにして、訴えた。
その響きは、あまりにも、傷口に近すぎた。
忘れようとしている記憶を呼び覚ます。
そしてそれで傷つくのは。
黒子だけではない。
「すみません…」
「…黒子」
呼びなおされた名に、改めて、黒子は自分の罪深さを思い知る。
忘れられずに。
思いきることができずに。
それなのに彼と幸せな時を過ごそうだなんて。
これは罰だ。
苦しみ、痛み、それでもどこにも行けないことは。
「わり、」
「火神君は、悪くないんです」
首を振って。
制止の言葉を、告げる。
こんなはずじゃなかったのに。
どう転んだって、幸せにはなれない。
突きつけられたのは、酷く残酷な現実だった。