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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
ぱたぱたと走って、青峰を探す。
そこら辺にいれば、身長ですぐにわかるので、どこかの部屋に入ってしまっているのだろう。
いちいち扉を開けて、中を見回した。
準備室など、普通はいらないようなところにはいないだろうとも思ったが、見過ごしてしまうと後が面倒なので、きちんと全部確認していく。
「隠れたりしてないッスよね…」
「…流石に、そこまで意地が悪くはないと思うんですけど」
「だよね…」
「まああんまり隠れる場所ないと思うんですけどね」
「そうかも」
ぱたぱたと走って、渡り廊下に出れば、急な突風で、黒子は髪を抑えて、立ち止まる。
「あれ、黒子っち!?」
「いえ、ちょっと…」
かつらが飛びそうで。
それを口に出してしまうと笑ってしまいそうで、黒子は、曖昧に語尾を濁した。
「黄瀬?」
その低い声に、黒子は凍り付いた。
「…あ、緑間っち」
「何を一人で騒いでいる」
「いや、1人じゃないんスけど」
「そういえば黒子の名を呼んでいたが?」
「あー、えーっと……」
黄瀬がどう返事をしていいか困っていると、緑間の視線は、すぐそばで俯く少女に行き当たった。
黄瀬がこんな純粋そうな女子を連れているのは珍しい。
そういった子も嫌いではないが、そういう子には本気で答えなくちゃいけないからと言っていたのを、緑間は、ちゃんと覚えている。
ふと、髪の間から覗く顔の輪郭が。
見慣れたものの気がして、緑間は手を伸ばした。
「……黒子?」
「………どうも」
顎を緑間に掬われて、何とも言えない表情で、黒子は挨拶を返した。
緑間は、驚きに、そのまま黒子を凝視している。
「ちょっと!緑間っちその手はないッスよ!!」
黄瀬が手を出して、今にもキスに移行しそうな体制の2人に割って入る。
きっと緑間は意図していなかったのだろうが、あの距離感はやばい。
「…どういうことだ?」
何故、黒子が女子の制服を着てこんなところにいるのか、訳が分からない。
「ハロウィンだからか何だか知らないですけど、青峰君に脅迫されてるんです」
「脅迫?」
その剣呑な響きに、緑間は眉を寄せる。
「だから青峰っち探してるんスよ。見ませんでした?」
「…いや。知らないな」
「…そうですか。すみませんでした、お騒がせして」
黒子は会釈すると、遠ざかろうとする。
緑間は慌てて、その肩を掴んだ。
さっと黒子が振り向く拍子に、髪が流れて。
緑間は一瞬、誰を相手にしているのかわからなくなる。
「…ハロウィンなら、これを持って行け」
「…はぁ」
即席にポケットから出した数個の飴を黒子の手に握らせる。
今日の彼のラッキーアイテムが、駄菓子だったのだ。
「…ありがとうございます」
別にハロウィンがしたいわけではないと思いながらも、黒子は一応受け取っておく。
甘い物は嫌いではない。
それから、付け足した。
「もし青峰君を見かけたら、渡り廊下とか、見えやすい所で捕まえておいてくれませんか」
「…いいだろう」
「…緑間っち、なんか妙に素直じゃないッスか?」
「ふん。青峰の悪ふざけに付き合わされる黒子が憐れだと思ったまでだ」
「全くですね…」
「じゃあ、よろしく頼んだッスよ!」
「ああ」
「それでは」
黒子の手を引いて、黄瀬が先導して走っていく。
緑間は走るな、と内心思ったが言わなかった。
黒子がこちらを見てひらりと手を振った。
それを見て可愛いと思ってしまう自分がいることに気がついて、緑間は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
女装した男に見惚れるなど、冗談ではない。
そう思って、また、歩き出す。
目的のなかったその足に、青峰を探すという指針を付け加えて。
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