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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
屋上への扉を開けた。
こっちを見るのは、黄瀬、緑間。
あれ。探してたやつがいない。
「あ、青峰っち」
「テツは?」
「んー、何か今日は来ないみたいッス。いつもならいるんスけど」
「そのようだな」
「で、オマエら2人で昼飯かよ。寒いな」
「そういうこと言わないでくださいッス!」
「別に昼を済ませるだけだ。誰がいようといなかろうと問題はない」
「……」
「あっそ。じゃーな」
「あれ、食べてかないんスか?」
「いやオレテツに用事あるだけだし」
「何々?」
「…オマエには言わねー」
「ヒドッ!いいじゃないスかちょっとくらい!!」
「オマエに言うとうぜーし。緑間、ソイツついて来させんなよ」
そう言い放って扉を閉めた。
一応そうは言っておいたがさっさと走ってその場を去る。
何にでも口を突っ込んできすぎなんだ、アイツは。
もうちょっと控えめになれと思う。
テツを見習え。
大体ウチには五月蠅い輩が多すぎるんだ。
そう思いながら、ぶらぶらと図書室に顔を出した。
クラスの女子が意外そうな顔をしているのをよそに中に入って辺りを見回す。
通路を全部見て、いないことを確認して、外に出た。
元々図書館なんかに用はない。
本を借りるつもりだってなかったから外に出て、次は教室に行ってみる。
多分いないだろうと思いながら。
「おい。黒子テツヤ、いない?」
「え?…誰だっけ、それ」
「このクラスの奴だけど」
「…ああ…?」
「……。わかった。何でもない」
適当な奴に話しかけたのを損したなと思いながら中を覗いて、いないことを確かめた。
別にアイツがそういう存在だっていうのはわかってたはずなんだが。
ここまでの無反応を返されているのかと思うと、やるせなくなる。
本当ならもう諦めようかと思ってたけど、何か意地になって、次は職員室付近に行く。
絶対見つけてやる。
職員室ではもう誰かに声をかけることなんてしなかった。
なんか誰かがオレに気付いて宿題出せとか言ってきた気がしたが無視して走り出した。
何でいない!
これだと意図的に避けられているみたいだ。
腹が立つ。
次は保健室に向かおうとして、その途中で、思いがけず、見つけた。
ふらふらと、本を片手に、歩いていく姿。
「テツ!!」
呼ぶと、酷く驚いた顔をして振り向いた。
けれどオレが近づくと、慌てて走り出す。
「おいこら!待て!!」
テツは、待たない。
振り返る様子すらなく走る。
いつもならすぐに追いつけるはずだが、歩行者がいちいち邪魔で中々追いつけない。
普通の奴ならミスディレクションで誤魔化せたかもしれないが、オレではそうはいかないんだろう。
「なんで逃げんだよ!!」
そう言いながらもアイツは階段に差し掛かって。
3段飛ばしで飛び降りて後を追ったらすぐに追いつけた。
ただそれでテツは更に焦ったのか足を滑らせた。
一瞬時間が止まったみたいだった。
とっさに腕を掴んで強く引く。
受け身が取れずにそのまま転ぶテツにつられて、オレも倒れこんだ。
多少は痛いけどこれぐらいは全然たいしたことない。
「…っぶねー……」
身体の上に黒子をのせて、青峰は息をつく。
落ちなくてよかった。
本当に、ひやひやした。
「おい、怪我ないか!?」
「…はい…」
テツは呆然とした様子で、頷く。
とりあえず引っ張って立たせた。
テツはまだどこか呆然としている。
「平気か?どこも痛くねーよな?」
「…はい、多分大丈夫です。すみません」
とりあえず、ほっとして。
それから疑問がわいてくる。
「なあ、なんで逃げた?」
最初からんなことしなけりゃこんなことにはならなかったろう。
別に何かした覚えもないし、喧嘩だってしていない。
テツは少し複雑そうな顔をしている。
腕だって掴んだままだし、どうやっても逃げられないってことはコイツぐらいわかってるだろうけど。
少し不安で、手の力を強めた。
「…今日は、誰にも見つかるなって言われたんです」
「…は」
「赤司君に」
「……」
本当にろくなことをしない奴だな。
「なんでオレらから隠れなきゃなんねーんだよ…」
「まあ、彼にも、いろいろ考えがあるんですよ」
「…オマエ、アイツの言うことばっかり聞くなよ」
心配になる。
教室でも誰にも意識なんてされてなくて。
皆に忘れられていく。
なあ、オレ達にも見つけられなくなったらオマエどうするんだよ。
「それより、何か、用ですか」
「あ、ああ。明日夜家来ねぇ?試合見よーぜ」
「ああ、そういえば、明日でしたね」
「その為に滅茶苦茶探してやったんだぜ。感謝しろよ」
「そのお蔭でボクは赤司君に叱られるんですけどね」
「黙ってりゃばれやしねーだろ」
「それがなんだかんだで知ってしまうのが彼の怖い所ですよ」
「キモいな」
「青峰君」
「わかってる。冗談だよ」
「…わざわざ、ありがとうございました」
「まーオマエならペナルティもたかが知られてるだろ」
「そうですね。多分」
「…昼とか、1人で食べたのか」
「まあ、適当に」
「…赤司もヒデー奴だよな」
「……それでも、これで技術があがるなら、ボクは、嬉しいですよ」
ため息をついた。
オレ達がやらなくちゃいけないことと、こいつがやらなくちゃいけないことは、また、全然違うのだろうけど。
ぽんと、頭を撫でてやる。
「じゃ、部活で、会おうな」
「はい。また、後程」
「あ、明日のこと黄瀬には言うなよ。ぜってー来るって騒ぐからな」
テツは、笑う。
「わかりました」
それから手を振って、アイツは、階段の向こうへ姿を消した。
可哀相に。
なんて思ってしまうのは、間違ってるんだろう。
だってアイツは、つらいなんて、きっと思ってないだろうから。
それでもっとバスケが楽しくなるんなら、歓迎するべきなんだろう。
それがアイツの寂しさと引き換えに得られるのなら。
オレはもっと強くなってバスケを楽しんで。
それで、アイツの傍に少しでもいてやればいいのかなと、思った。
十分アイツが幸福でいられるように。