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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
(女黒子で(でもなんら変わりないんですけど)、5年後くらい設定)
高校卒業後、バスケ界に羽ばたいた青峰と、無難に大学に進学した黒子は、中々会えなくなって、連絡も殆ど途絶えていた。
黒子も青峰もそうマメな性格ではなかったし、青峰はそういう配慮に欠けていて、黒子は気を使って、連絡を取っていなかった。
それでもまだ恋人である状態は、継続していた。
恐らく。
別れようという話題が、2人の口から上ったこともないし、何より、2人とも、好きあっていたから。
一度は破局になるかと思えるような、絶縁状態を過ごしたのだ。
それでも好きだった。
嫌いにはなれなかった。
そんなことは2人とも十分わかっているから。
それでもこのままの曖昧な関係はよくないという思いが黒子にはあって。
青峰の将来の為にも、早く、結論を出さねばいけないと思っていた。
そんな矢先のこと。
『よう、テツ』
「……こんにちは」
青峰から、電話がかかった。
『今オマエん家の近くにいるんだけど、会えねえ?』
「…唐突ですね。会えますけど」
『じゃー○○の店で待ち合わせな』
「………はい」
そして、電話はあっさりと切れる。
どうしてこんなに唐突で、しかも身勝手なのか。
いっそ呆れるほどに爽やかだ。
仕方なく黒子は身支度を整えて、店へと急いだ。
どこにでもありそうなシンプルな喫茶店だ。
あまり2人でこういうところに行ったことはなかったけれど。
きっと、話をするにはちょうどいいと思う。
いきなり家に来られたら困るから、正直、よくここは気を利かせてくれたなと、思った。
いつも何も考えていないような人だから。
店に入って辺りを見回せば、懐かしい、大柄で、色黒な彼の姿がある。
黒子がそちらに歩を進めれば、青峰も気づいたのか、笑って、片手をあげた。
「よう」
「…お久しぶりです」
「髪伸びたなー」
「そうですね、ほったらかしたので」
「お前はやっぱ、長い方が似合うよ」
黒子の髪は、もともと、長かった。
それを高校に入るときに、心機一転として切ったので。
長い姿を見せるのは、本当に久しぶりだった。
ウェイターが注文を取りに来るのは中々想像できなかったので、青峰は自ら注文何にすると黒子に聞く。
「…じゃあ、紅茶で」
「わかった」
それで青峰はウェイターを呼んで、紅茶を追加注文した。
青峰の前には、既に、ミルクの入ったコーヒーが置かれている。
「…でも、久しぶりに会うのに、変わらねぇな。化粧しねぇのかよ」
「基本的には、面倒なので。…就活の時には、流石にしますけど」
「あー、もうそんなことしてんのか?まだ3年じゃなかったっけ」
「そうですけど。もう動き始める時期なんですよ。色々、面倒なことが多くて」
「ふーん」
「キミは、忙しくしてるみたいですね」
「あーまあな。ま、バスケばっかやってるよ」
「楽しそうで、なによりですよ」
「おう。オマエ、いちいちそーゆーのとかチェックしてくれてんのか?」
「まあ、ほどほどに」
「んだよ、愛情のねー奴だな」
キミこそ、連絡もしてこなかったくせに。
別に期待してはいなかったが、これで恋人なんて名乗っていていいのかと正直思ってしまうのも、事実だった。
そうこうしているうちに紅茶が運ばれてくる。
黒子は、遠慮なく砂糖とミルクを入れて、かき混ぜた。
「オマエ、やっぱ甘いの好きなのな。砂糖多くね?」
「一般のレベルに含まれると思いますけど」
「まーな。でも、太るぞ?」
「ご心配なく。体重、殆ど変っていませんから」
「…別に太ってもいいのにな」
「別に痩せたいとも思ってないんですけどね」
「何か食えば?ケーキとかなんでも」
「もう紅茶頼んじゃったんですから、追加でケーキセットにとかできないでしょう」
「いや、してくれるかもよ?」
「いいですよ。そんな、お腹空いてるわけでもないので」
適当な雑談を交わす。
平均的な恋人たちの会話なんて知らないが、全く、甘さのかけらもない。
別に甘くしようとだなんて思ってもいないが。
「…なあ。オマエ、就活大変だって言ったよな」
「…言いましたけど」
それが何か?と、黒子は青峰を見上げる。
「面倒な思いをしなくていい、楽な方法があるぜ」
「?…コネで就職させてくれるんですか?」
嫌だな、と思いながら黒子は問うた。
そういうやり方は好みではない。
「いや。まーそれもやろーと思えば出来るだろーけど」
「じゃあ、なんですか」
「…オレが養ってやってもいいぜ」
「は?」
黒子は、思わず聞き返した。
「結婚しねえ?」
「はい?」
驚いて、また、返してしまう。
何でこの調子でプロポーズをされなくてはいけないのか。
しかも数か月ぶりに会ったばかりだというのに。
そんなメリットから結婚を進められても何かの間違いだと思うだろう、普通。
「何の冗談ですか」
「冗談じゃねえよ!」
「こんなのと結婚してもキミは別にいいことありませんよ?」
「いいこと悪いことの問題じゃねぇだろ」
「キミさっき就職活動しなくていいとか言ってませんでしたっけ」
「揚げ足取んな!」
相変わらず、青峰は口では黒子に勝てない。
少し考える様子を見せた後、口を開く。
「…別に、オマエが仕事したけりゃすればいいけどな。それとこれとは話が別だし」
「はぁ」
「オマエもうすぐ大学卒業で自由になるだろ。だから結婚できんじゃねーかと思っただけ」
「…はぁ」
「…つーかオマエ自身は結婚してーのかしたくねーのかどっちなんだよ!」
オレにばっかり喋らせやがって。
青峰に見つめられて、黒子は、少し戸惑った。
そんなこと考えたこともなかった。
というか、いきなりすぎる。
今まで会えるか会えないか、連絡が来るか来ないかを気にするだけだったのに。
でも、好きだ。
それは変わらない。
一緒にいることが好きだし、傍にいたいと思う。
「…よく、わからないです」
「あ゛?」
「好きですよ。傍に、いたいと思いますけど。…こっちからキミにしてあげられることなんて、」
「ならなんにも問題ねーじゃねーか」
「ちょっと…人の話聞いてます?」
「聞いてる聞いてる。いらねーよ、別に何にも」
「……」
「オマエさえいりゃ十分。別に、オマエだってオレが金持ってるから結婚したいってわけでもねーんだろ?」
「それはないです」
「ならいーだろ。オマエが卒業したら結婚な」
「………こんなに軽いノリでいいんでしょうか」
「いーんだよ。別に誰にも迷惑かけてねーだろ」
「そういう問題なんでしょうか」
「そういう問題だよ。ほら、行くぞ」
「は?」
「出るぞ」
「…行くって、どこに」
「婚約指輪?買ってやるから」
「……!?いえ!いりません!そんなの!!」
「は!?おいこら、そんなのとはなんだそんなのとは!!」
「そんな形式的なことしなくてもいいです!」
「るせぇいいから行くっつってんだろ!!」
半ば引きずられるようにして外に連れて行かれる。
会計は、いつもなら折半していたところを彼一人が支払って。
まあお金は持っているのだろうからそれでもいいのかもしれないけど。
それでもとにかく、婚約指輪なんて、想像しただけでも恥ずかしい。
まだ話を受け止めきれてすらいないのにそんなもの貰えない。
それなのに青峰はどんどん黒子を引っ張って行ってしまう。
「…ちょっと…青峰君、ホントに、困ります」
青峰が足を止める。
黒子は思わずぶつかった。
「わ」
「…嫌なのかよ」
「……勿体ない、でしょう」
「金が?」
「…別に、そんなの、必要なくありませんか」
「……。オマエな。たまにはオマエに何かしてやろうってオレの気持ちがわかんねえのか?」
「……。それぐらいなら、たまには電話とかしてくださいよ」
「え」
「……」
「…あー。オマエ寂しかったのか?」
「……別にそういうわけではありませんけど」
「拗ねてんのか。…悪かったな、ほっといて」
「……いえ」
「つーかならなおさら買いに行くぞ」
「!!それはいいんですってば!」
「何でそんなに嫌がるんだよ」
「……」
「言えよ。そしたら考えてやる」
「………。恥ずかしい、ので」
黒子は、青峰を見ていられなくて、俯いた。
何でこんなに赤裸々に語らなくちゃいけないんだ。
指輪なんてしたら常に彼のことを考えなくちゃいけなくなる。
今までだって、彼のことを忘れられたときなんかないのに。
いやだ。
「買うぞ。ついて来い」
「だからいやだって…!!考えてくれるって言ったじゃないですか!!」
「考えた。けど買うわ」
「いらないですから!!」
「ホントに?」
「え?」
「ホントに、いらねーのか」
ずい、と顔を近づけられて。
顔が赤くなるのを抑えきれない。
近い。
近すぎる。
久しぶりだから。
もっと触れたくなる。
収まっていた欲望が暴れ出す。
「ホラな。いいから行くぞ」
手を引かれて、今度は少しゆっくり、歩き出す。
もう否定はできなかった。
だって好きだから。
嬉しくないなんて、そんなこと、あるはずない。
「どんなのがいーんだろーな。やっぱダイヤ?」
「…高くなくて、いいですから」
「そーゆーとこは一番高いの買ってとか言えよ」
「冗談でも言えませんよ」
「ハイハイ」
手を掴んだまま、歩く。
「サファイアがいいです」
「あ?」
「指輪」
「サファイア?んだっけ、青いやつ?」
「はい」
「何でだよ。値段とか気にすんなっつったろ?」
「値段は気にしてません」
「じゃあ、」
「キミの色だから」
青峰は、黒子を振り返る。
黒子はぼんやりと、左手の薬指を見ている。
そこに、青い光が、宿る。
「オマエって…」
「はい?」
顔を掬われる。
そのまま、青峰は口付けた。
可愛い。
生意気な時が多いのに、時々どうしようもなく、可愛い。
そのギャップに、やられている。
「…往来ですから、そういうの、控えてください」
「はっ可愛くねーの」
「それでいいです」
身体を離して。
そしてまた歩き出す。
手は離さないまま。
「じゃーオレも黒のなんか持つかな」
「……すいません、お金ないので、買ってあげられないです」
「いーよ自分で買うし」
「…そうですか」
「で、少しは連絡するわ」
「……いえ、そこは、別に無理しなくていいんですけど」
「無理じゃねーよ」
「……はぁ」
「オマエも電話して来いよ。もっと、話そうぜ」
「…そうですね」
お互いにお互いの色を身に着けて。
遠くにいても、より近くに。
もっと、ずっと。
「しかし、結婚したらオマエ黒じゃなくなるなぁ」
「…青峰、ですか。…なんだか、不思議ですね」
「黄瀬とか緑間とか、もう黒子って呼べねーよな」
「そうですね。どうするんでしょうか」
「アイツらならずっと黒子で通しそうだけどな」
「そうかも、しれませんね」
笑いあった。
こうやって話していくことで、夢物語を現実にしていく。
その後向かった先の店で注文した青いサファイアの指輪と。
金属板に薄くのせられた黒いオニキスのネックレス。
お互いの色を携えて生きていく。
それが同じ色になっても、そうできたらいい。
これからもずっと。
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