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黒子のバスケの2次創作ブログ。 キセキ中心の黒子受け雑食(黒桃有)で文章書いてます。お勧め→◇
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昼休みというのは、休みを必要としない人間にとっては非常に面倒なものだ。
 



 

緑間は、不機嫌そうに廊下を歩いていた。
教室では馬鹿どもが異様に騒ぎながらトランプで熱戦を繰り広げている。
余りにも五月蠅く、迷惑なので、とうとう教室に残ることを諦めたのだ。

他のクラスの友人のところといっても、緑間には自ら訪ねていくような相手はいない。
忘れ物をするようなへまはしないし、部活で最低限の知り合いは確保できている。
だから、これと言って人脈を増やそうという意思は緑間にはなかった。
とにかく時間を過ごす場所を見つけなくてはならない。

中庭もテラスも、空き教室も部室も、なんだかんだで人の影がある。
弁当を広げたり、ゲームをしたり、くつろぎ、慣れ合っている。
別にそれをどうこう言うつもりはない。

人に迷惑をかけないのであるなら。

しかしどこへ行こうにも人がうようよしていて、流石に気が滅入ってきた。


---1人になりたい。


1人でなくてもいい、せめて、ゴールに向けてシュートを放つときの、
あの静謐な集中ができるような、そんな場所が欲しかった。


だが、昼間の学校ではそんな望みは諦めるしかないようだった。
緑間は仕方なく、本でも借りるかと図書室へ足を向ける。

その途中で、ふと、静かな一角にたどり着いた。

図書室へと向かう階段の隅。
図書館の前にはそこそこ人が集まっているようだったが、階段辺りには、誰もいない。
少し薄暗いが掃除は行き届いていて不潔な感じはしなかった。

やっと1人になれたと、緑間が無意識に息をついたところで、がさがさと、ビニールを丸める音がした。
緑間が胡乱に思いながらそちらを見ると、さっきまではいなかったはずの少年が、そこにいた。

「お前、いつの間に…」

思わず声に出すと、その少年は眉を寄せて緑間を見上げた。
彼は大柄な緑間と比べると小柄だったし、座っていたのでその差は歴然としていた。

「僕は、緑間君が来る前からいましたけど」
「…!?」

驚いてもう一度彼を見て、緑間は気付いた。
彼が、自分と同じバスケ部員で、最近赤司が目をかけている男であることに。

最初は、何故実力もあって計算高い男がそんな奴に目をかけるのかと思ったが、
最近では1軍での試合にも稀に出てくるようになった。
異常なまでの影の薄さを利用したパス回しに特化した選手。

それが彼、黒子だった。
いつも、体操着か部活着でしか会うことはないので、一目ではわからなかった。

「…黒子、か」
「はい」

すぐに1軍入りした緑間たちには、全く縁のない場所にいながらも、
自分たちと違うやり方でのし上がってきた。
それは周囲ではよく噂になっていたが、緑間はそれに関与せず
自分の技術を磨くために練習を重ねるばかりで殆ど関わろうとはしていなかった。

それが、まさかこんなところで会うとは。

しかし黒子は昼食を食べ終えると、すぐに文庫本を開いた。
緑間には関与せず、本をあっさり読み始める。
そのあからさまに無関心な態度に緑間はむっとして、余計なことを口に出す。

「こんなところで本を読むと、眼を悪くするぞ」
「…余計なお世話です」
「本を読むのならどこでもできるだろう」

黒子は、面倒そうに本から顔をあげる。

「移動するのが面倒です」
「ならば、なぜこんなところにいるのだよ」

教室からここは、そこそこに離れている。
わざわざ本を読むために出向くような場所ではない。

「…教室はいろいろ騒がしいので。女子に、席を取られてしまいましたし」

緑間は黒子を見つめて、ああ、あり得るだろうと思ってしまった。
唯でさえどこにいるかどうかわからないのだ。
本人の許可なしで席を使われることもあるだろう。

仲良く談笑しているのを、わざわざ席を返せと言うのは中々気まずいものがある。

「…成程」
「君も、そんなものじゃないんですか?」
「……」

緑間は、苦虫を噛み潰したような顔をする。
黒子は、肩を竦めた。

「まあ、この辺りは誰も来ないので、静かでいいですよ。
僕の所有物ではないですけど、羽を伸ばしたらいいんじゃないですか」
「……別に、お前の意見など聞いていないのだよ」
「はぁ。そうですか」

黒子は、また黙り込んで本を読み始めた。
あっという間に場が静かになる。

誰かが騒いでいる声が、とても遠くの出来事のように感じた。
ぱらりと、乾いたページの擦れる音がする。
ここだけ、古びた図書館の一室のようだった。

緑間はとりあえず目的の図書館に行くことにして歩き出した。
途中、気まぐれで、見かけた階段の電気のスイッチを入れてやる。
その時はそれきりで、黒子とそんな会話を交わしたことなどあっという間に忘れていた。




その数日後、初めて緑間と黒子が組むことになった。
緑間は他のメンバーよりも移動が少ないので、位置の補足がしやすいらしく、
あっという間に黒子はタイミングの良いパスを飛ばすようになる。

そして緑間は理解する。
黒子もまた、特別な1人なのだと。





後日緑間は、またあの一角へ向かった。

黒子はまるで背景のようにその場に座っている。
緑間が明りを点け近づくと、黒子は顔をあげた。

「どうも」
「…試合中は便利だが、日常生活では難儀なようだな」
「…別に、慣れてますから。便利なこともありますし」
「そうか」

緑間のはっきりした物言いに、物怖じすることもなく黒子は答える。
はい、と黒子は言って、それから、ふと気づいたように口にした。

「明り、ありがとうございました」
「…明りぐらい自分で点けろ。パスまでできなくなったらどうする気だ」
「…そうですね」

僕一人の為に使うのはもったいないような気がしたんです、と、黒子は付け足した。

「高い学費を納めてるんだ、それぐらい構わんだろう」
「…まあ、それはそうですが」
「…それに、これからお前は帝光の名を広めるのに一役買うことになるだろうしな」
「………褒めて、くれているんですか?」

黒子のまっすぐな問いに、緑間は眼鏡の位置を直しながら腹立たしそうに答えた。

「自惚れるな。俺は事実を口にしたまでだ。せっかく力があるなら、それをみすみす失うようなことをするな」
「…はい」

緑間は早口でそれだけ言うと、さっさと立ち去ろうとした。
その背を、黒子が呼び止める。

「緑間君」
「…なんだ」
「折角なので、君もここをお昼に利用したらどうですか。
2人いるなら、電気もあまり無駄にならないような気がします」
「……考えておく」
「はい」

緑間はすぐに立ち去ってしまった。
よくわからない人だ、と黒子は思う。

けれど、自分の力をまっすぐに評価してもらえたことが嬉しくて、ふっと笑った。


 
 

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