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ので、拍手とキリ番機能は停止させてもらいました。今までコメントありがとうございました!嬉しかったです!
更新は予約してますので、これまで通りにちゃんといくと思います。
暫く連絡は取れなくなりますが、これからも、よろしくしてくれたらうれしいです。
手の届かないゴールめがけて、ボールを放る。
成功率の上がらない作業。
才能が欠片もないと示されているかのよう。
才能が全てではないことを、黒子は理解している。
けれど、才能が最低限無ければ、何をしても無駄なこともまた、知っていた。
自分は悲しいほどにバスケに向いていない。
いくら努力してもつかない筋肉も体力も。
これ以上には伸びそうにない身長も。
病弱な体も。
どこまでも貧相で、惨めになるだけ。
周りの技術だけがどんどん向上して。
それにちっともついていけないのを、やりきれない思いで見つめている。
誰も自分には期待していない。
見ててくれるだけでいいんだと、黄瀬は笑って言った。
それがどれだけ黒子の自尊心を削る言葉かも知らずに。
その日から、毎日毎日、黒子は、遅くまで一人で残りだした。
皆が自分を見捨てて、帰るまで。
たった一人でボールを投げる。
長くなりだした日のおかげで、まだ、外は薄ら明るい。
1区画だけに明りを点けている。
そのせいで周囲は異様に暗かった。
忍び寄る闇。
いっそ全て呑み込まれて溶けて消えてしまえたらいいのにと黒子は思った。
ガラ。
重い扉が、開いた。
とっさに、気配を隠すのを忘れた。
合ってしまう目。
「まだ帰っていなかったのか」
「…緑間、君」
どうして来てしまうんだと思った。
どうか気付かないでほしかった。
触れられたら壊れてしまう気がした。
自分一人で立て直せたらまだ笑っていられる気がしたのに。
「片付けろ。帰るぞ」
「…ハイ」
その言葉に従ってしまうのは、怖がっているからだろうか。
これ以上見放されたくないからだろうか。
少しでもよく思われたいからだろうか。
なんて、惨め。
「いったい何がしたいんだ、オマエは」
怒ったように紡がれる問いの、答えを。
黒子は持たなかった。
彼自身問うていた。
黙り込むと、緑間は、そのままの様子で続けた。
「今更、何を練習している」
「………よく、わかりません」
「何?」
「………」
言葉にすることができない。
わかっていない、掴めていないこと。
それがこんなにもありすぎる。
曖昧で形になんてできない。
自分が何を望んでいるのかわからない。
誰を愛して何を愛してどのために今自分は生きてそして生きようとするのか。
「…オマエが余計なことをすれば、士気が乱れる。そのことはわかっておけよ」
「………」
それ程の価値が今のボクにあるというのだろうか?
それを問う勇気を黒子は持たなかった。
恐れている。
何をかをはわからないけれど。
踏み出すことを、踏み外すことを、恐れている。
ただここにいたいのだ。
ここからどこにもいきたくはないのだ。
ここですらもう居心地の良い場所ではないのだけど。
「オマエはオレ達にパスさえ送っていればそれでいいのだよ」
立ち止まる。
足が止まる。
いや止めたのか。
わからない。
行き過ぎた緑間が振り返る。
何か、言おうと思った。
けれど喉は凍り付いていた。
もう夏が近いのに。
誰かに届くような言葉を、黒子は、もう持たなかった。
それほどまでに擦り切れた。
すり減って、なくなってしまった。
何が?
もう、わからない。
「黒子?」
声がかかる。
行かなくてはいけないと感じる。
何か答えなくてはいけないと。
それでも、体が動かない。
脳の信号は絶たれて、かろうじて動かせるのは視線だけだった。
「…何をしている」
何も。
何もしていません。
何もできないんです。
何も言うことがないんです。
ボクに何ができますか。
もうボクにできることはありませんか。
ボクはパスを送るただの道具ですか。
ボクの想いも、意思も、喜びも。
そこには介在しなくていいんですか。
キミたちはそれ程に遠くに行ってしまったんですか。
寒気がする。
寒い。
寒い。
歩けない。
怖い。
痛い。
身体の感覚がない。
目の前が真っ暗だ。
頭の中がぐらぐら回る。
立っていられない。
「黒子!?」
地面に崩れ落ちた黒子に、緑間が駆け寄った。
欲しくもない助けを得るのは、こんなにも簡単なのに。
「どうした、大丈夫か」
頷く。
それだけで精いっぱいで。
上半身を抱えられる。
大きな身体。
お願いだから自覚させないでほしかった。
頭が痛い。
気持ちが悪い。
吐きそうだった。
吐くほどの食事も、実はとってはいなかったけど。
結局、なんとか呼吸を取り戻して立ち上がって。
心配した緑間によって、黒子は家まで送られた。
最後まで自分の足で歩いたけれど。
少しよろめくだけでいちいち大丈夫かと、言葉が寄せられて。
その心配が鬱陶しいのだと、思ったが、言える立場ではないから言わなかった。
全く自分は何様のつもりなのか。
届かない、できない、なれない、理想ばかり、追いかけている。
諦めることができない。
「平気か」
「はい、すみませんでした。もう、大丈夫です」
「無理はするな。具合が悪いなら病院へ行け」
「そこまででは、ないと思うんですけど」
「それで倒れていたのでは話にならん」
本当に。
本当に、そうですね。
わかっては、いるんですけど。
「練習も明日は休め。赤司にはオレが言っておく」
「いえ、いいです」
「…黒子」
「お願いします。休みたくないんです」
緑間の顔が歪められる。
それでも譲る気はなかった。
「練習してどうなる。オマエにこれ以上何ができるとも思わんが」
「…できます」
精一杯の虚勢を張って睨み上げた。
声はかすれて、小さくて。
それでも、緑間に届くには十分だった。
「…何?」
「ボクの限界を、勝手に決めないで、ください。まだ、何か、できること、が、」
息が、切れる。
緑間が心配して伸ばした手を、黒子は、振り払った。
「平気です!」
「馬鹿かオマエは!!自分の体調ぐらい自分で管理しろ!」
無理やり腕を掴まれ、止められる。
痛い。
圧倒的な力の差が、恨めしくて。
泣きたくなる。
こんな優しさなんていらない。
こんなものを望んでいるわけではなかったのに。
「………すみませんでした」
「……もういい。…今日は、さっさと休め」
「…はい」
手が、放される。
掴まれた部位に手をやった。
熱い。
「…オマエはもうそれでいいだろう」
落とされる、言葉。
「それだけで十分だろう。これ以上、何を望むことがある」
いやです。
欲しいんです。
キミたちに並ぶ力が。
キミたちに、必要とされる力が。
頼りにされる、力が。
いらないならいらないんです。
ボクがいなくたってキミたちは勝てるのだから。
勝てるようになってしまったのだから。
「オマエはそれでいい」
よくない。
よくないんです。
全然よくない。
それでも。
唇をかみしめて、もう、何も言わなかった。
何も証明できる気がしなかった。
力尽きてただ緑間を困惑させ空回りするだけだった。
それだけの力すらない。
じゃあなと告げられた言葉に頷いて。
遠ざかる背を見送った。
縋りつく言葉も悲鳴も。
何も出ないまま。
何も考えられなくなりたかった。
そのままでいいと言われることを喜びと思えるなら、このままでいられたのに。
でもその言葉は、ボクが一番欲しくない理由からくるものだったから。
ただの情で、習慣で、ただそこにある、それだけのことから、紡がれたことだから。
本当は欲しくなんてないけどそこにあるのが当然だから必要とされているだけだから。
そんなものはいらないのだ。
本当はもういらないのだ。
そんなことで必要とされたくなかった。
守られているのなんか性に合わないんだと思います。
支えになりたいというか。
だけどキセキの中での認識はマスコットみたいな感じがしますよね。
それに反抗する黒子が書きたかったんです。
緑間と黒子が、一番喧嘩できそうな2人ですね。
他の人だとあんまり相手にしてくれないというか。
遠慮しあう感じがあるんですけど。
ここはなんか率直にものを言いすぎる感じがします。
そのぐらいの方がいいのかもしれませんが。
それにしても、この黒子はだいぶきてますね。
このころは、本当に、何もかもがマイナスにしか働かなかったんだと思います。
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